ライ麦畑の反逆児 ひとりぼっちのサリンジャーの作品情報・感想・評価・動画配信

「ライ麦畑の反逆児 ひとりぼっちのサリンジャー」に投稿された感想・評価

謎多きサリンジャーの生涯。


絞られた情報から描かれるJ.D.サリンジャーという伝説の作家。
長編小説は『ライ麦畑でつかまえて』のみ。
しかし、20世紀においてもっとも重要な小説の一つとして有名であり、当時から現代まで多くの読者を惹き付ける。


成功を手にすれば金や権力や酒に溺れるといったことが多いが、彼は違った。
彼は成功を手にした後も何も変わっていない。
周りの環境や状況が変わっていっただけで、彼は多くの悩みや苦しみを抱えていた。
そんな苦しみを書くという行為から、芸術へと昇華させていく。

人気を博すれば、自然と孤独がつきまとうものだが、彼自身が孤独を心の中では望んでいたのかも。
彼の世界は現実以上に文章の中に存在していた。
誰にも入り込めない神聖な世界として。
自己を表現できる世界として。


【サリンジャーの人柄】
「主人公に若者が描かれているのが多いのは、純粋さがあるから。」
この言葉の裏には、自身が理想としていた人としての姿や、裏切られたり逆に認められたりする彼の人生の波乱さを神聖な小説の世界に入り込ませたくないという意味合いもあるのか?と思った。
サリンジャー自身が結構純粋で、誠実な人物像であるので、自身を投影しているといった印象を与える。

サリンジャーという人物の情報は、彼のその後を見てもわかるように明らかとなっていない部分が多い。
そんな中でも、本作のサリンジャーという人物の沿革は興味深い。
ニコラス・ホルトの掴めないサリンジャー像も素晴らしく、ふわふわしながらも自らの芯はもっているような、頑固さを持っているのも彼っぽい。
サリンジャーって割と複雑な内面を持っていたと思う。
作家として大衆に媚びないと成功することは不可能。それはつまり自己を否定することに繋がり、読者のひとりひとりに語りかけることは、自身の本音とは裏腹の行為へと繋がっていく。
読了後、不思議な余韻を残すサリンジャーの作品群は、彼の純粋さと社会の不純さが入り交じり独特な世界観を放っているように感じる。

“書く人間”として突き詰めていく姿は、サリンジャーが心の拠り所としてたどり着いた、瞑想の姿のように洗練されていく。
日記を書いて自身の感情を把握するように。
手紙を書いて自身の心情を吐露するかのように。


才能はあるが、その才能が実際の生活では欠落している部分もあり、“書く人間”として生きることが彼にとって最大の救いともなった。
恋人の裏切りや、戦地での経験っていうところが、彼の純粋さに社会の厳しさや理不尽さを植え付けていく。
一人の男として、一人の夫として、一人の父親としては、彼が生きていく上で望んでいる生き方となっていかなかったのは本当に不器用。
本作は淡々と描かれているようで、相反するような態度をとったりする、人間臭いサリンジャーの姿を観ることができ、誠実な作風にも好感が持てる。

彼が戦地に携えたのは紙とペン。
普通ではない人生を、普通たらしめることを可能にさせたのは、物語を構成するサリンジャーの頭の中だけなのだ。
やっぱり人間って複雑で、複雑な人間ほど魅力あるよねぇ。


自分のことを理解できていないと感じるとき、何かに記すことで自分を見ることができるような気がする。
その瞬間自分が何を思い、何を感じていたのかを明確にさせることができるのは意義のあることだと思う。
苦しんだこと、楽しんだことを心に留めておくことは良いことでもあるが、日記のように積み重ねて自分の気持ちを整理することも必要。
自分も自分のことをよくわからないなと思うこともあるし、自分も日記をつけ始めようと思い始める今日。
サリンジャーの魅力はその謎な部分にあるからしてやはり彼についての映画と言ってもほとんど、謎のままってかんじ。私は10代後半の頃、黄緑色の布製カバーに包んだ「フラニーとズーイ」をかならず懐に忍ばせお守りにしていたか弱き乙女であったが、やはり、かつて私がフラニーに自己投影していたように、ホールデンに自己投影するファンが劇中に出てきたが、そんな人の心の普通なら届かない領域までみずみずしく小説に書き下ろすサリンジャーの魅力というものはこの映画からも見て取れる。ホールデンなんて書かなきゃよかった、と劇中でも言っていたけど、それほど影響力が大きかったんだろう、ジョンレノンの事件もそれを助長させた。
でもこの映画でのサリンジャーが思ったよりも爽やかで驚いた。小説を書くために学校に学びに行くというタイプとも思わなかったし、人並みに恋愛をしている青年だったんですね。瞑想を子供たちに教えるシーンもあのサリンジャーが?とも少し驚いた。奥さんに瞑想しても、人を許せないのね、と言われ素直にそのことばを受け入れる当たりも、あれ、サリンジャーってただのひねくれ者じゃないんだってなりました。
サリンジャーの人柄はまぁどうであれ彼の小説が好きです。
彼の小説の内容的に書いた本人のことはあまり知らなくていいかもですね。
ライ麦畑でつかまえては私にとって大きな作品。
その作者の伝記ということで視聴しました。
サリンジャーの生い立ちや苦悩が少しでも理解できたかも…いや、きっとそんなことないんだろうな。
ホールデンは私の生涯の友人です。
夕

夕の感想・評価

4.2
ドキュメンタリーぽいタッチやけど若干クサさも目立った
ただやっぱりライ麦畑とかバナナフィッシュ、フラニーとゾーイーなんかの一節やその背景が出てくるとグッとくる
サリンジャー役のニコラスホルトのちょっと泣きそうな演技とかがすごく良かった
あと、後妻のクレアの口ぶりが一瞬で好きになってしまいそうな感じだった
etc

etcの感想・評価

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個人的に好きだけど好きだということを他人に言いたくない(知られたくない)三大作家がフランツ・カフカ、アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ、で、このJ.D.サリンジャーなんだけど観て思ったのはやっぱり人に絶対に好きだということを知られたくないなってこと。外界を拒絶し自分の為に書いていたのに結局はこういう映画の作中人物としていつまでも誰かの思い出の中のライ麦畑に閉じ込められたままエンタメとして消費されてしまう人生について少しだけ悲しくなった。そうして「孤独」だとか「天才」だとか「苦悩」だとか軽くて薄くて便利な言葉で語られて理解されてしまうことの憐憫も。

では、私の花よ、土曜日に!
愛の限りをこめて
はるこ

はるこの感想・評価

3.6
作家の映画ってまあこういう感じだよな。
破くかな…と思わせて破かなかったシーンと、あとそのままさよならして帰る…と見せかけてキスするとこも好き。
「ライ麦畑で出会ったら」の試写会に当たって観に行ったんだけど、その作品が青春映画でとても素敵だったんだよね。だから、サリンジャーって名前を聞くだけで私には魔法がかかってしまう。
とは言え、思ってた物語と違くて戦争のシーンはホラーかと思った、、、
トラウマで書けなくなった苦悩、「生きてるのがすまないくらい」と吐き捨てた彼の言葉が印象的だった。PTSDのような症状が彼に出て、作家としての道がもう無理かもってなりながらも光を掴もうと挑む姿がかっこよかった。自分で自分を救おうとしたんだね彼なりのやり方で。
サリンジャーが堅苦しい人だっていうのは、何かで知ったんだけど、こういう背景があったんだと知って納得できた。
フラニーとゾーイーについても最後話が出てきて、気になってた作品だったから尚更読みたくなりました!
本をあまり読まない私が初めて共感する感覚を持ったのが「ライ麦畑でつかまえて」だったと思う。
作者は中二病を拗らせていて生きづらいだろうけど、人として魅力があるんだろうなと感じた記憶がある。
多くの若者が、言えないことを言えない自分を代弁してくれていると、この本に共感したのも納得の主人公の描写のされ方。

自分も年がいくつになってもホールデンに共感し憧れて生きていくと思う。
Arbuth

Arbuthの感想・評価

4.1
おそらくそういう若者は世界中のあらゆる時代にいたと思うけど、『ライ麦畑で捕まえて』は多分10代の頃に最も影響を受けた本の一つだ。16歳から18歳にかけて毎年一度は読んだ。20代になって、村上春樹訳の『キャッチャー・イン・ザ・ライ』も読んだ。
ご多分に漏れずホールデンは自分の代弁者だと思ったし、この映画の中に出てきたイカれたファンと程度の差はあれ大して違ってなかったと思う。

だけど、作者のサリンジャーについては全くと言っていいほど何も知らなかった。10代の僕はホールデンには夢中になっても作者については何も調べようとはしなかった。ホールデンはこんなにもサリンジャーの生き写しだったというのに。

サリンジャーが生きた時代も、彼女を大俳優に奪われたことも、第二次大戦に従軍しトラウマを負ったことも、その後瞑想に傾倒していったことも、何一つ知らなかった。もちろん映画が全て事実を語ってるとは思わないけど、サリンジャーについてより良く知れたのは良かった。
ウィット先生、本当に良い人だな。あの人がいなければ『ライ麦畑』は書かれなかったのだろう。

もう一回読みたくなってきたな。
け

けの感想・評価

3.5
丁寧な伝記映画
作家が必要とする人生経験は10代の時に全て得られるってね
才能を見出したあの先生が素敵
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