せびたん

ビッグ・クラブ・パニックのせびたんのレビュー・感想・評価

ビッグ・クラブ・パニック(2015年製作の映画)
4.0
「フランケンジョーズ」の監督マーク・ポロニアが製作した映画なことをオープニングテロップで知り、なんかもう全部分かったような気になりました。

予想はまったく裏切られることなく、手作り感満載だけどワンアンドオンリーな魅力のある作品になってましたね。

登場人物は全員ろくでもないやつらです。
B級慣れした人ならにやにやしながら観れるけど、慣れてない人は胸クソ悪いんじゃないでしょうか。
私は登場人物があまりにも善人だったり正義の味方だったりすると何か裏があるんじゃないかと思ってしまってダメなんでちょうどよかったですが。
たとえばホントは悪魔的な思想を持ったドS男なんだけど、そういう自分を世界は許してくれないことを分かっていて正義の名のもとに暴力を行使することに秘かな愉しみを見出しているんじゃないかとか。太宰治的な自己愛的な自責の念とか谷崎潤一郎的な幇間の精神から、彼の中では馬鹿げた存在である善人のふりをしておどけてるんじゃないかとか。

だって人はグレーな生き物だから真っ白なものには隠された暗闇(これに失望する必要はない)があり、真っ黒なものには意外な白さ(これを過大評価してはいけない)があるはずなのです!(笑)

って、めっちゃ話がそれてるので元に戻しますが。

まずストップモーションで動く巨大蟹がかわいいんです。
そして数奇な運命により蟹の巨大化の原因となった主人公(女)の異様さ。この女、やばいです。私が本作の登場人物ならこの女に構いすぎて巨大蟹に最初に食われる人になる自信があります(私はやばいと分かっていてもこういう女に引き込まれるように構ってしまう性分なのです。半端ない引力に抗えないのです!なぜかというとたぶん自分の姿を投影しているから笑)。

この女が巨大蟹に乗っていくシーンの異様さはクレイジーすぎて受け入れがたいというのに、なんか綺麗なシーンを撮ってるみたいな感じに仕上げた人達のことが私は大好きです。そして今もあの女の親友だと言い張る高校時代の友人女子に共感しながら観ておりました。

そうですね、あえて言いますとこれは誰の心の中にもあるクレイジーな部分を愛そうよ、というメッセージなんじゃないでしょうか。たとえどんなにクレイジーな部分であっても、自分の一部である以上否定はできないわけです。否定して抑圧するといつか必ず暴走します。それを回避するには受け入れるしかないわけで、まずはその部分を自覚して受け入れた上で制御していくしかないわけです。きっとそういう深い話を映像化したに違いないと半分くらいは本気で思いました。いや5分の1くらいかな…。

スコアについては、なんかいろいろ刺激を受けたから高めになってますけど、一般的にはZ級だと思うので、よくて2.0くらいだろうなって感じで観るのがよいと思います。
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