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西遊記 孫悟空 VS 白骨夫人のmatchypotterのレビュー・感想・評価

西遊記 孫悟空 VS 白骨夫人(2016年製作の映画)
3.5
2022年も残りわずか。
その残された日で何観ようかと言う段階で、何でこれを選んだのか、自分でもさっぱりよくわからない。

少なくとも『アバター』をハイフレームレートの3Dで観て圧倒された流れで観るモノではなかったかも知れず、なんだかやたらと古風に見えるが、16年の映画だから言うほど古くない。
映像技術の進歩と財源の違いは、かくも違いを見せつけるのか。

しかし、しかし、ネタでは負けてはいない。
そして、監督がサモハンキンポー、、、負けてない。

『西遊記』。
三蔵法師が天竺のお寺で経典授かる旅。アジア圏の伝承民話の中でNo.1の知名度なんじゃないかと思える冒険ファンタジー。

三蔵法師、孫悟空、猪八戒、沙悟浄。
ちゃんと悟空が岩に挟まれて身動き取れないところに三蔵法師が通りかかるところから始まる。
虎に追われてる三蔵法師を助ける代わりに岩から出す。
でも言うこと聞かないから頭に輪っかがハマる。

そこにお釈迦様が登場して、悟空よ、三蔵法師について旅をせよ、と。
孫悟空、天竺まで行ってくるわと、ビョーーン、の甲斐も虚しく、歩いていかないとダメだよ、と。

で、旅の序盤で、豚と河童、猪八戒&沙悟浄も道連れに。

三蔵法師、少し上の世代は夏目雅子、同世代は深津絵里、だが、この三蔵法師は男。
それは意外だが、徳を積むための努力を惜しまず、質素倹約、献身の精神を忘れない強く優しい法師。

この孫悟空はかなりモジャモジャ。
おちゃらけててふざけっぱなしだけど、それなりに旅においては頼りにもなってる。

この2人はとても“イメージ通り”でわかりやすくてワクワクする。
真面目一徹な三蔵法師と、おふざけ手抜き一徹の孫悟空の凸凹コンビ感が堪らない。

猪八戒と沙悟浄、、、八戒はまぁいい。何ならいきなり2段階で化けるし、おとぼけキャラも定番感があって良い。

沙悟浄。この沙悟浄は、見た目が初めて見るタイプの沙悟浄。青くて筋肉隆々のスキンヘッドの強面。プロレスラーみたいな。
沙悟浄って、もっとヒョロくて、ひ弱で臆病で打算的なイメージがあるけど、今回は単細胞でブタをおだてるパワー系。

そのいつもの三蔵法師御一行が、いつもの旅の道すがらに別の妖怪一派と小競り合いになる。
白骨夫人。見た目は白くて美人だが、とんでもない化け物。
そして、手下も美人3人娘、と思いきや、とんでもないスペックの妖怪。

そして、その白骨夫人一派は、裏で都の王にすり寄り転覆を計りながら力を得ている。

『西遊記』の良いところは、明らかに善の三蔵法師御一行が明らかな悪の妖怪たちと衝突を繰り返しながら天竺に向かう話なのに、勧善懲悪一辺倒でもないところ。

孫悟空がガンガン相手を打ち倒すでも、三蔵法師が正論で説き伏せまくるわけでもなく、彼らもまた未熟さを知り、時には打ちひしがれ、絶望しながら成長する姿が印象的。

時には、相手の罠や策略にハマり、疑心暗鬼になったり、すれ違い、仲間を疑ったりする。
それもまた不完全な人間や世界を映しているかのような。

白骨夫人にもそれなりの背景や意図があり、三蔵法師や孫悟空ともそれなりに語り合い、主義主張もぶつける。
ただのバトルアクションだけではない、レジェンド級の民話たる所以もしっかり描こうとする。

今回、特に孫悟空はいつになく献身的であり、三蔵法師のために結構尽くす。それが逆に仇となり、分裂したり、弱点となる。

ちょっとおセンチにもなるこの毛むくじゃらの孫悟空、嫌いじゃない。
ゴールドクロスの孫悟空、めちゃカッコいいやん。

最後は“白骨”夫人だけあって、“がしゃどくろ”、キタ。水木しげるも驚きの原寸大の“がしゃどくろ”。これにビビらず三蔵法師のために立ち向かう。

その果ての三蔵法師と白骨夫人と孫悟空、ちょっと感動さえする。
三蔵法師の教えと、彼の見てる世界、向かう先、勇気、やっぱり唯一無二の和尚、師匠。

全体的にはCG多めだけど、少し日本の特撮ヒーロー映画にも近い雰囲気だし、昔のキョンシー系のチャイニーズファンタジーさも感じられたし、個人的には好きだった。
『西遊記』が好き、ファンタジーアドベンチャーが好きなら、十分に楽しめる映画。

昔から憧れる武器、“如意棒”。
世界にも、日本にも、名だたる名刀や神が持つ武具があるが、この重いのか軽いのか、長いのか短いのか、太いのか細いのか、よくわからない“如意棒”は異色の雰囲気を醸し出す憧れの棒。

こんなに有名でカッコいい“棒”は他にはない。


F:1942
M:559
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