藪雄祐

アルジェの戦いの藪雄祐のレビュー・感想・評価

アルジェの戦い(1966年製作の映画)
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アルジェリア独立戦争をテーマとした作品。本作がベネチア国際映画祭で金獅子賞を獲った際、フランス映画代表団はフランソワ・トリュフォー(「大人は判ってくれない」監督)を除いて本作を反仏的な映画と見なしてボイコットしたそうである。題材となった戦争が終わり間もないということもあるが、アメリカにとってのベトナム戦争であるように、フランスにとってアルジェリア戦争はいわば負の歴史である。

本作はアルジェリア民族解放戦線(FLN)のゲリラを主軸としつつも、決してヒロイックに扱っていないところがまず独特といえる。独立を勝ち取るために彼がとった手段は無差別テロ。大人も子供も次々とテロの犠牲となる。それに対するフランス側の行動もまた無慈悲である。そもそも歴史的にみればフランス人はアルジェリアを支配・抑圧してきたわけであるが、ゲリラを鎮圧するために現れたフランス軍将校たちが、第二次世界大戦でレジスタンスとして戦ってきた人間で構成されているというのは皮肉である。

生々しいドキュメントタッチの映像が続き、見ているあいだずっと緊張感が絶えることはない。本作の監督は「戦火のかなた」の影響を受け映画に目覚めたそうだが、それも頷ける。終盤のデモ隊のシーンは多くのアルジェリア人を導入し、実際に起きた現場を再現したということもあり、とても迫力ある映像に仕上がっている。

劇中の後半、フランスに捕らえられたゲリラが報道陣の質問に答える場面はいちばん印象的だった。

この映画は2時間弱の作品であるが、そこで語られている出来事は形を変えて世界中で行われているのだ…。
藪雄祐

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