MasaichiYaguchi

ガザの美容室のMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

ガザの美容室(2015年製作の映画)
3.4
ガザで生まれ育った双子の監督タルザン&アラブ・ナサールの長編デビュー作は、パレスチナ自治区ガザの小さな美容院を舞台に、戦時下の過酷な日常を逞しく生きる13人の女たちの人間ドラマを描いていて、イスラエルの地上侵攻が秒読みの今、更に過酷な状況になっているので胸潰れる思いがする。
女性客で賑わうクリスティンの美容院では、離婚調停中の主婦やヒジャブを被った信心深い女性、結婚を控えた若い娘、出産間近の妊婦ら、様々な女性たちが、夫々会話に花を咲かせながら午後の時間を過ごしている。
集まった女性たちが髪を整え、その順番を待合室で待つ中、通りの向こうではハマスとマフィアによる銃の発砲が起き、更に空にはイスラエル軍のドローンが飛んでいる。
やがて銃撃戦は激しさを増し、美容院は戦火の中に取り残されてしまう。
極限状態の中、女性たちは平静を装うも、マニキュアを塗る手が震え、小さな美容室の中で諍いが始まる。
いつも争いをするのは男ばかりだと思う女性たち。
オシャレをする、メイクをする、たわいないおしゃべりをして、たわいない毎日を送ることで彼女たちは、戦争をする男たちに抵抗しようとする。