映画猫

アリータ:バトル・エンジェルの映画猫のネタバレレビュー・内容・結末

3.4

このレビューはネタバレを含みます

アリータは不気味の谷を超えられない。

最初にネタバレしてしまうとこれは序章映画なので、設定の根拠や謎は最後まで見ても明かされないし、ストーリーの目的もアリータの自分探しという抽象的なものに終わっている。序章映画でもマトリックスのように面白い映画はあるからそれは問題ではない。何なら世界観や設定は好みなので原作は面白そうだと感じさせてくれたが、一本の映画としては残念な結果に終わっている。
というのも、アリータは不気味の谷を超えられなかった。アリータの顔はCGで作られたやや2次元キャラクターに近い造形になっていて、強烈な違和感を感じさせる。これはアリータのサイボーグとしての個性を際立たせるための演出も兼ねていると思われる。人間のようで人間ではないこの主人公に、ストーリーを通じて人間以上の人間味を視聴者に感じさせることが作品の試みであり、傑作としての分水嶺だったように推察するが、そうはならなかった。シナリオがこま切れすぎて感情移入が難しいからだ。漫画原作によくあることだけど、小規模の起承転結のストーリーをいくつも繋いで読者を飽きさせない漫画の仕組みが、映画だと尺が合わなくて盛り上がりどころが分散してしまう。さっきまでAって言って盛り上がっていたのに数分後にはもうBって言ってる。そしてさらに十数分後にはCになってる。ストーリーとしてはつながっていてもあまりに多くの出来事を詰め込みすぎて感情が追いつかないし登場人物がコロコロ軸を変えているように見えてしまう。大幅に改編してでも一つの大きな山場を決めてメリハリをつけて欲しかったが、結果的にアリータに人間以上の人間らしさを感じるのは難しくなってしまった。
ただし、試み自体は面白かったと思うし、犬の虐待は絶対許さないおじさんには非常に共感できた。
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