冒頭のシークエンス、
映像のコントラストがパキッとしていて、でも落ち着いたムードで、過去の回想シーンがしっかり作り込んであって、音楽がじわっとセンスが良くて、おじいさんもなんだかかっこよくて、
あ、この映画たぶん好き、、ってなったけどその見通しは甘かった。
物語はミステリー仕立てに展開する。
おじいさんはさしずめ探偵役だ。
あ、ミステリーなんだ、となって爽やかだったトーンの雲行きが怪しくなり、過去と現在を行き来するうちにだんだんとゲスな感じになっていく。
ミステリーとして謎が気になって見進めていくと、ゲスいというよりエグい真実がちらほらと、、
あー、このミステリー、めんどくさい。
ややこしいなあー。
結構面白かったけど、もやっとしたまま終わる。
「こころ」みたいな話なんだけど、Kの手紙に相当するエイドリアンの日記の内容が1ミリも明かされない。
過去のベロニカの家庭の不穏なヤバい感じも投げっぱなし。母親からトニーへの謎かけの言葉。
おじいさんが良い人になって終わりなのか。
トニー曰く、
記憶の改ざん。自己防衛のため。
ノスタルジーという病いにかかっていた。
とのこと。
歳をとると何が本当だったかわからなくなることがある。日記とかつけてないし。
この物語の真相はさておき、記憶の中の過去が真実と乖離していくことは多々あるだろう。
元妻がトニーに贈った真新しい腕時計を喜ぶように、私もなるべく過去にとらわれないで生きようと思った。