それと、『危機』が全てのプログレアルバムの中でもトップ5に入るほどに好きな私にとって触れねばならないのは、やはり1と5。 初っ端はClose To The Edgeからの抜粋で、欲しいところが欠けていたりする。誠に残念。ただし5番目のClose To The Edgeは堪らなく格好いい。それだけにSiberian Khatruが無いのが一層悔やまれる。 You And Iの、浮世という喜劇的な世界で楽しむ、束の間の休息・間奏としての曲といった世界観も、ライブだとさらに楽しめる。『危機』は、全体として劇的な人生とその殊勝な終焉を描いた超大作映画のようなコンセプトアルバムだと思う。聴いていると天国と地獄に同時に存在しているような感覚に陥る。Close To The Edgeのあの耽美で、過激で、そして克明な音たちの展開に始まり、You And Iという遠浅の優しさによってそのような激動の疲れを癒し、そしてSiberian Khatruという終焉に辿り着いた者だけが手にすることができる諦観を知る。このように、アルバム全体を通して聴いて初めてYesという偉大すぎるプログレッシブロックバンドの宗教的世界観を知り、涅槃の境地にある寂静のようなものに身を包むことができる。 Yessongsでは、それをより活気と共に楽しめるのに、なぜ映像からは終焉を連れてくれるSiberian Khatruを外してしまったのか…。 アルバムのスコアなら5.0なんですよ、文句なしで。だから0.9点分は本当にその無念によって引かれています。