ポルりん

くだんのポルりんのレビュー・感想・評価

くだん(2008年製作の映画)
1.2
ただただ不愉快な思いのする30分程の短編映画。

あらすじ

弟が生まれてくることを心待ちにしている少年ともや。
しかし、彼の前に現れた赤ん坊は、本で見た妖怪「くだん」の姿をしていた。
その日を境に、周囲から冷たい目を向けられ、両親も不仲になっていく。


こういった作品を描く場合、ホラー描写以上に日常的な描写をリアルに描き、視聴者がキャラクターに共感させる事が重要であり当たり前の事だ。
しかし本作の場合、日常的な描写があまりにも適当すぎるのと同時にキャラクターが理解出来ない行動をする為全く共感出来無い為、悪い意味で不快な思いをする作品としか感じる事が出来なかった。

本作を鑑賞した場合、大概の人は不快な思いをすると思うが、特に健全な精神を持つ女性でその中でも妊娠を経験した人なら間違いなく不快に思うはずだ。
昔、「恋空」といった糞まみれの可燃物を読んだ際もかなり不快に思えたが、個人的にはそれに匹敵するくらい不快に思えた作品であった。
とりあえず、この監督兼脚本家はセンス以前に脚本を書く前に、作品のテーマに必要不可欠な情報を全然リサーチしていないように思える。
恐らくだが本は勿論、ネットですらリサーチしていないのであろう・・・。

まず、第一に妊婦が出産した当日に家に帰宅しているように描かれているが、普通は母子ともに1週間くらい入院するのが当たり前だ。
まして本作の場合、赤ん坊が「くだん」の姿をしているといった条件まで付いている。
即退院など絶対にありえないだろう・・・。

また、母親が普通に家事をこなしている様に描かれているのだが、これもおかしい話だ。
普通、出産後1ヵ月近くは肉体的や精神的にも非常に不安定になる。
しかも、赤ん坊が「くだん」の姿をしているという事もあり、精神的ストレスは半端なものではないだろう・・・。
普通でも家事をこなすのが困難な状態だというのに、とてもじゃないがこの母親の場合は家事をこなす事など出来ないのではないか・・・。

この他にも色々な面でリアリティがなく、観ていて非常にストレスが溜まってくるのだが、最もストレスを感じるのは本作のテーマを「母性愛」と置いている点である。
監督がどういった考えのもとで演出しているのかは不明だが、恐らくは悲劇の中でも母親が子供や赤ん坊の為に一生懸命育児をしている様に見せているつもりなんだろう。

だが、母親の行動を見ていると、赤ちゃんと一緒にいるシーンが極端に少なく家事や電話をしているシーンが多いので、母性愛以前に育児放棄しているようにしか見えない。
終いには新生児の顔面を布団で覆わせて寝かせるといった殺す気としか思えない行動をしている。
この状態で母性愛を語られても何も心に響かないし、綺麗事にしか聞こえないのだが・・・。

個人的に障害児を使って母性愛を語るのは不愉快なのだが、やるならせめて事前に出産や育児についてリサーチしてから製作するべきなのではないだろうか・・・。
そもそも奇形をホラーにする時点で不謹慎過ぎるだし、苦しんでいる家庭に失礼じゃないのか!
演出・演技・照明など色々と酷い部分もあるが、それ以上に「母性愛」をテーマにしているのに母親本人が全く真逆の事をしている点が最も酷く不愉快であった。
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