りっく

ワンダー 君は太陽のりっくのレビュー・感想・評価

ワンダー 君は太陽(2017年製作の映画)
3.7
本作が特に前半から中盤にかけて、いわゆる障害者を主人公にした感動ものと一線を画しているのは、確かに物語の入りは彼が一般の小学校という外の世界に初めて足を踏み出すところから始まりはするものの、両親に無駄な心配をかけたくないと手のかからない子供でいようとする姉。そんな彼女の幼馴染であり高校入学時にイメチェンし距離ができてしまった親友。主人公とボタンの掛け違いからこちらも距離ができてしまった親友と、章立てて主役が変わっていく。

物語の中心に据える人物を確かな手さばきで変えていくことで、障害を持つ主人公を中心に世界が都合よく進んでいくという独善的にも見える展開を意識的に排除しようとする。そして本作で繰り返し語られる地球を中心に、その周囲を他の惑星が回っているという宇宙観と呼応し、その地球は決してひとつではなく、それぞれを中心に据えれば、それだけの物語が誕生するという、非常にフェアな視点にものすごく共感させられる。

だからこそ、新学期を迎え、新しい環境でどう自分の居場所を見つけ生き残るか。あるいは新しい環境に飛び込むことと今まで付き合ってきた友人とどう折り合いをつけるか。ボタンの掛け違いや見栄で離れてしまった親友と、どのように仲直りをするか。そんな普遍的なテーマを、学園ものにありがちなスクールカースト的な要素を強調せずに、丁寧に描きだすことに成功している。

だが、終盤にかけて物語はやはり物語の中心が障害を持つ少年に戻ることで、結局は障害者を描いた良質な映画という範疇に収まってしまうところが惜しい。それにより、彼を妬んでイジメをし、本人は謝罪の念があるにもかかわらず、モンスターペアレンツ的な両親が校長を脅し転校させられることで、物語からフェードアウトしてしまうエピソード等、フェアな視点で描いていたからこそ、救いのチャンスがあるべきだ。

また、姉の親友が演劇の舞台で主役を掴みながらも、自分の代役である親友の家族が観客席にいると分かり、忖度して姉に主役を譲り、結果的に代役だった姉が絶賛されるというエピソードがあるが、幼い頃から家族同然の付き合いをしていたならば、例えば本来であれば主演するはずだった彼女の姿を観るために、翌日の上演回も姉の家族は見に行き、彼女も賞賛されるといったようなエクスキューズがあって然るべきである。
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