このレビューはネタバレを含みます
劇場の予告で流れている時から気になっていた作品。
オギー以外の登場人物、特にヴィアや、ヴィアの友人ミランダ、オギーの友人ジャックに視点を移し、それぞれの立場を丁寧に描いていたのは良かった。ラストシーンでオギーが校長先生の言葉を引用し、「人をいたわれ。みんなも闘っている。相手を知りたかったらやることは一つ。相手を見ること」と語る部分も素晴らかったです。「愛とは関心を寄せる(pay attention)こと」という名台詞を残した『レディ・バード』を思い出しました。
オギーは決して「不幸な星の下に生まれた不憫な男の子」などではなく、周囲から大事にされてきたぶん鼻持ちならないところもあり、彼が家族にいることで姉のヴィアがどれだけ寂しい思いをしてきたか、家族の中で最もプライオリティが高いのはオギーだと事あるごとに思い知らされることで、彼女どれだけ心をすり減らしてきたのか。コニーアイランドでヴィアがおばあちゃんと過ごすシーンは涙なくして観られなかった。
悪い人がほとんど出てこない御伽話のような映画だけど、「オギー苛め」の首謀者だった少年を、最終的に退学処分にして終わらせるのは流石に違和感。オギーに対し、最初から偏見なく接することができたジャックやサマーのことより、苛めっ子の心の問題こそ丁寧に描くべきだったのでは。後半は彼の「不在」がずっと気になっていました。
『人は見た目が9割』なんて本がベストセラー認定されていたのは今からもう15年前か。世の中はすごいスピードでアップデートしている。「ルッキズム」についても色々考えさせられる映画でした。