ShinMakita

潜水艦クルスクの生存者たちのShinMakitaのレビュー・感想・評価

2.9


2000年、夏。ロシア北方艦隊ヴィジャエヴォ基地を発進したオスカーII型原潜〈クルスク〉は、大規模演習に参加するためバレンツ海を潜航していた。演習初日、艦内区画長のミハイルは、気心の知れた仲間たちの仕事ぶりを見て回る。すると、機関部は特に問題無さそうだが、魚雷管室のパヴェルが模擬魚雷の温度が上がっているのが不安だと漏らす。まだ危険域には達していないが、早く発射してしまいたいと言うパヴェルに同意するミハイル。しかし艦長がこの報告を無視したおかげで、大惨事が発生することになった。過酸化水素の漏れが原因で高温となった模擬魚雷が爆発、さらに満載の通常魚雷に誘爆し、〈クルスク〉が海底に沈没してしまったのだ。浸水と火災の地獄絵図をくぐり抜け、最後尾の第9区画へと逃げ込んだミハイルたち。彼ら20数名が、100名以上いた乗組員のうちの生存者であった。区画浸水と酸欠の危機が迫るなか、じっと救援を待つミハイルたち。ロシア海軍もすぐに〈クルスク〉沈没の事実を把握、演習統括のグラジンスキー大将が救助活動を指示するのだが…

「潜水艦クルスクの生存者たち」



以下、予備バッテリーはミールと一緒にネタバレ号ツアーに売ってしまいました!


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20年前にロシアの原潜が事故に遭ったというニュースはぼんやり覚えてたけど、顛末は記憶にありません。そこで、あえて下調べしないで鑑賞に臨みました。まずは最初のヨーロッパコープのロゴに「製作リュック・ベッソン」と出て、一瞬後悔。ヨーロッパコープの〈一見豪華だけど、実は中身の無いありきたりB級映画〉はすっかり飽きてたし。
ところが、続いて監督名が出て驚き。え? トーマス・ヴィンターベアなの⁈ ヒューマン映画専科な、このデンマークの若き名匠が監督…ということで、期待値が上がっていきました。


んで結論。
俺は良作だと思うよ!


以下は、事故の顛末も一切知りたくないって人はスルーしてね↓↓↓


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事故の原因や生存者たちの死に至る経緯、そして救助側のドラマ、家族のドラマは全て想像もしくはフィクションと取るべきです。が、似た状況なのはなんとなく解るというか…特にウクライナ侵攻の今現在観れば。 とにかくロシア側の対応の酷さに絶句。陸上場面のドラマは、常に弱者の目線で描く監督の面目躍如という感じです。2000年だというのに潜水艦の設備も整備もガタガタで、潜水救助艇に至っては三隻しかなく、一隻はスクラップ、一隻はタイタニック号ツアーの会社に売っぱらい、最後の一隻は予備バッテリーもハッチドッキング装置もぶっ壊れているという始末。ロシア、何て国なんだ…全員死亡と思い込んで初動が遅れ、メンツのために外国の援助も拒否、挙句に家族にもマスコミにも平然と嘘を垂れ流し、救助の手が尽きたら「軍人たるもの死を覚悟してるはずだし」と投げ出す始末。もいちど言うけど、ロシア、何て国なんだよっ!

しかしまぁ、どの国も多かれ少なかれ、似た部分はあるだろうけどね。福島原発、セウォル号…と、うちらアジア人も本当は何も言えないんだよな。やっとイギリスが乗り出してきてハッチ開けたときの絶望感。たまらなかったです。


役者的には、ちょいロイ・シャイダーに雰囲気が似たミハイル役のマティアス・スーナルツが素敵。これが恐らく遺作のマックス・フォン・シドーの存在感もなかなか。泣き顔が絵になるレア・セドゥも良し、でした。遺作となったミカエル・ニクヴィスト、コリン・ファースなんかも出ていて豪華です。

プロット的に良かったのは、あの腕時計の使い方ね。合同葬儀からラストカットまでのミーシャには泣かされたよ。確かにフィクション色がやや強い気もするけど、ヴィンターベア色もちゃんとあって、良作だと評価する次第。リュック・ベッソン、たまにはやるなお前!(←誰様?)
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