そむそむぬん

潜水艦クルスクの生存者たちのそむそむぬんのネタバレレビュー・内容・結末

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このレビューはネタバレを含みます

『生存者たち』というタイトルだから23人だけ生還すると思ったら全員亡くなりました。ハピエン厨の私には大変ショックでラストの火災のシーンあたりから怪しくなる雲行きに動揺しっぱなしでしたが、タイトル詐欺…とまでは言えないかもしれません。2000年に起きた事故を元にした実話なので。「織田信長が家臣に裏切られて寺で亡くなることを話すなんてネタバレだ」くらい無茶ですよね。

ロシアの政治的強行姿勢によって殉職させられた海軍潜水艦乗務員とその遺族の話。

序盤で時折見られた艦内と海底の対比シーンが恐ろしい。中で叫びながら隔壁を閉鎖するため奮闘したり外に助けを求めるため壁をハンマーで叩いたりしているが、外には魚影すら見られずただ静寂の暗い海が広がるだけ。水深たったの100mでもひとたびイレギュラーが起きれば人間の手に及ばない領域なのだ。

乗員安否不明の時点で開かれる家族たちへの記者会見と、ラストのブレックファストの場面が切ない。

全員で歌を歌うシーンが生前の乗員たちの最後の姿となるが、歌には皆の心をひとつにして精神をととのえる効果があるのだと思った。田植えや茶摘みといった現実の農業だけでなく、創作においても『火の鳥』で民衆たちが勇気を奮い立たせる場面で声を合わせて歌っていた。

原作はロバート・ムーアの小説『A Time to Die -The Untold Story of the Kursk Tragedy』