てぃだ

ブリジット・ジョーンズの日記 ダメな私の最後のモテ期のてぃだのレビュー・感想・評価

3.0
赤いパジャマを着たブロンド髪にややぽっちゃり系なヒロインがワイン片手に「All By Myself」を涙ながらに熱唱する。こんな鳥肌が立つほど恐ろしいシーンで幕を上げた『ブリジット・ジョーンズの日記』は、高校生の頃の僕にとっては恐ろしいホラー映画だった。「どうして私は幸せになれないの?」という負のオーラをOPだけで嫌というほどまき散らした自己陶酔臭の強いこのアラサー女は、間違いなくアメリカ映画史に燦然と輝くモンスタ-である。この女、「ダイエットしようとしたのにまた失敗しちゃった、テヘ」みたいな自分に甘いだけの人間にも関わらず、特に努力もしないくせにただ待っているだけで向こうからイイ男が勝手にやってくる。誰がどう考えても世界一のラッキー女。なのに自分だけが世界で一番かわいそうな女きどりである。この物語に世界中の女性が共感し大ヒットしたという事実が恐ろしく信じられなかった。いやこの映画、どう考えても理想の男ばかりを追い求めて結婚できない世の女性たちをバカにしてるとしか思えないんだが。結婚できないイタい女どもにせめてスクリーンの中だけでも夢を見させてあげよう的な空気しか感じない。余計なお世話じゃないか?俺が男だから理解できないだけか。


あの恐ろしいモンスター=ブリジット・ジョーンズがスクリーンに帰ってきた!!演じるのは勿論、レニー・ゼルウィガーである。アラフォーを迎えたブリジットはまたしてもたった一人で寂しい誕生日の夜を迎えている・・というOPから幕を開ける。そして聞いている曲がまたしてもあの曲・・ひぃぃ。悪夢再び?と思いきや、画面に映し出された英語タイトルを見て驚く。『Bridget Jones `s Baby』????ん?ベイビー?赤ちゃん?え?この女、いつの間に母親になってたの??????ということは今回のブリジット・ジョーンズは子育てママ奮闘記、ということなのか?変な邦題ですっかり騙されたよ。

 
とびっくりするのだけど、どうやらブリジット、せっかく結ばれたはずのコリン・ファース様とはやっぱりうまくいかず別れてまたシングル。しかもまだ母親になった兆しもないご様子。ということは、これから子供を産むということなのか。と思ったら同僚の協力もあって魅力的な謎の男(パトリック・デンプシー)と出会い、夜はまんまとベッドイン。その翌日、かつての恋人ファース様となんかいい感じになっちゃって、ファース様ともベッドイン。そして時は流れ3か月後、妊娠発覚。あれれ?でもちょっと待って、生理のサイクルとセックスした時期的に、私の子宮に精子をゴールインしたのは元カレそれとも謎の男?どっち?というまるで『マンマ・ミーア』的展開にお口アングリ。え?まじでこんな展開で引っ張るつもり?しかも脚本には英国を代表する大女優エマ・トンプソンが関わっているという。まじで?将来設計ゼロの女子大生かお前は。また「また失敗しちゃったー、私ったら、もういくつになってもおバカさん。てへ。」で笑って済ますつもりか。


というわけで、いくつになっても相変わらずディズニー映画のプリンセスのようにただ待っていればいつか王子様がやってくると思っている女に付き合わされることになる。のだけど、不思議と今回は不快感はあまりない。それは多分、レニー・ゼルウィガーによるところが大きい。何があったか知らないけど、絶頂期から数年、すっかりハリウッドから干されて映画出演がほぼゼロになっていた彼女が、スクリーンで主役として帰ってきた。それだけでもう大目に見ようという感じ。正直言えば、やっぱりゼルウィガー、顔、怖い。お歳を召したせいだけではない、明らかに整形しすぎの後遺症が『砂上の法廷』の時ほどではないとはいえまだ残っていて、やっぱり顔怖い。怖すぎてものすごく痛々しくておかしなことをやっていても全くもって笑えない。この辺り、無視するんじゃなくて、ブリジット・ジョーンズ自身が整形に失敗して顔がちょっと変に歪んじゃいました。みたいなセルフパロディ設定にすれば、あぁそうか自分を笑い飛ばす余裕が出てきたんだなということで安心できるけど、全然その余裕がゼルウィガーに見られない。色々と怖い。

 

物語の中心にいる彼女がそんな感じだからだろう、共演者たちも、どこかぎこちなく見える。不倫騒動で騒がれたベッキーに変に気遣っていた日本のTV番組の共演者たちを思い出すような、おそらく意図したものではない変な居心地の悪さというか空気感が、こっちにも伝わってくる。こんな状態で客を笑わせにこられても、見ているこっちも困る。中盤、ファースが一作目に自分が着ていたシャツを見つけ、過去を思い出すという形で一作目のシーンが挿入されるのだけど、見れば一目瞭然。ただ単に人間が年を取ったからだけではない、明らかに心の底から楽しそうな役者の顔がキラキラ輝いている。のに今の役者の変に疲れた、あんまり楽しくなさそうなぎこちない表情や空気はなんなのだ。何だか見ちゃいけないものを見てしまったような気がした。もし次回作があるならタイトルは、『Bridget Jones`s Funeral』だろうか。やめてくれ。
てぃだ

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