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ハイドリヒを撃て!「ナチの野獣」暗殺作戦のkateのレビュー・感想・評価

4.0
ショーン・エリス監督が15年の構想の末にオールプラハロケでエンスラポイド作戦を映像化。
抑制された色調とキリアン・マーフィー、ジェイミー・ドーナンなど実力派俳優達の好演で、淡々と作戦に関わったレジスタンスとパラシュート隊員の顛末を映している。

優れた戦争映画を観ると、人間の愚かさをひしひしと感じることがあるが、この作品にはその愚かさがギュウギュウに詰まっている。

第二次大戦中の元チェコスロバキア地域の状況やナチ、連合国との関係を事前に知っていると、何故ハイドリヒを暗殺する必要性に迫られていたのか理解しやすい。
レジスタンスのリーダーが作戦の実行を恐れた意味もである。

作戦はロンドン駐在チェコスロバキア亡命政府が立案したものらしいが、愛国心を利用した無謀とも言える作戦だった。監督が一番描きたかったであろう作戦実行後の逃走劇が精神的にしんどい。

チェコスロバキアの平和を希求し、ナチへの恐怖を抑え込んで作戦を実行した代償が余りにも大きかった。一番守りたかったはずのチェコ国民が次々と捕らえられ殺されてしまう理不尽さ。

シャコンヌの旋律で救済されたいが、これが史実だとわかっているからひたすらにツラい。英国政府の狡猾さとチェコスロバキア亡命政府の政治的思惑に胸糞悪くなる。

自ら平和への礎となる事を良しとする、類稀な勇敢さを持つ人々によって、今の世界が形づくられていることを改めて胸に刻んだ。
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