シャチ状球体

RAW〜少女のめざめ〜のシャチ状球体のレビュー・感想・評価

RAW〜少女のめざめ〜(2016年製作の映画)
3.9
第二次性徴は個人の一生において重大な意味を持つ不可逆的なもので、否応なく自分の体が恒久的に変化してしまう恐ろしい概念でもある。

劇中で何度も行われる強制(新入生歓迎会での強制的な洗礼、強制的な肉食、強制的な死)は抑えられない変化や欲求のメタファーであり、傍から見れば不条理なことでもそれを皆が当たり前だと思っていれば次第に受け入れてしまう。

怒りと愛情は紙一重で、それだけを頼りに行動すれば相手を傷つけてしまう可能性が高いし、自分はもっと傷つく。
ポルノが示す正解から外れないことが性欲だと何故か規定されがちだから(実際に抱くかどうかは別にして)欲求を見失わないように不毛な努力をしてしまったりすることもあるけど、人間個々人の差異なんて本来はもっとグラデーションになっていて簡単には分けたり決めたりできないはず。
そういったことをホラー要素のあるドラマとして抽象的に表現することで、自然と観客に現行の規範の可笑しさを考えさせられるようになっている映画。

特にマジョリティは粘膜接触に幻想を抱きすぎだし、逆に抱かなさすぎ。
痛みも衝動も欲求も、第三者には見えないナラティブによってそれぞれが独立してるよね。
シャチ状球体

シャチ状球体