おこめ

RAW〜少女のめざめ〜のおこめのネタバレレビュー・内容・結末

RAW〜少女のめざめ〜(2016年製作の映画)
4.8

このレビューはネタバレを含みます

カニバリズムという、生々しくてグロテスクな行為を描いているのに、瑞々しくて大胆で、色鮮やかで美しい。
自分の欲望に抗おうと苦しみもがいている姿も、欲望を止められず本能のままに行動してしまう姿も、どこを切り取っても恐ろしいくらいに人間味を帯びていて、その表情や気迫に圧倒されてしまう。

洗礼という儀式は少女が大人になっていくために必要な通過儀礼で、それを通して生きる上での何かに目覚めるのは、本来正しいのだけれど。
それが無情にも、カニバリズムや同性愛という、一般社会では受け入れてもらえないものに向かってしまったりもする。自分ではコントロールできないのに。
同性愛は差別されるべきものでは絶対にないけれど、この作品を観ると、食人にさえも意見する資格はないと実感する。人間にだって本能はあるんだから。獣医学もテーマとして持ち出されているけれど、私たちと動物と、何がそんなに違うのか。台の上にいる彼らと人間との、対比にならない対比がすごく印象的だった。

上のような感想も勿論ありつつ、この作品は結局愛の物語だった。
至る所に愛が溢れているのに、どれも報われなくて救われない。大人と子供の狭間で、自分ではどうしようもできない欲や葛藤に押し潰されて、それでも誰もが誰かを守ろうと、愛そうとする姿はあまりにも苦しい。それでもどんな時も何もかも抱えて生きていかなければならない。誰もが誰かの愛で生かされ、守られている。

美しすぎるフランス映画万歳。
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