モモモ

浮雲のモモモのレビュー・感想・評価

浮雲(1955年製作の映画)
4.1
相変わらずのダメ男映画なのだが、本作は一味違う。
とにかくモテて、とにかく節操ないが、とにかく甲斐無しで、とにかく死相がつきまとう。
戦時中に出会った男女の浮き沈む「戦後」を世知辛さタップリで描く人間ドラマ。
個人的には映画は「時間」を如何に切り取るかだと思っているので本作にはたまらない物があった。
「一体、彼らはどんな関係で?」を説明する冒頭、親戚の男とのトラウマであろう過去を僅か2ショットで示す「回想」の現代にも通じる教科書的使用法。
序盤で「回想」は鳴りを潜めるが、とにかく行間を想像させる「時間が飛び続ける」構成の果てに再度の「回想」で物語を閉じる。
気づけば子を成し、気づけば新たな女を作り、気づけば子を堕し、気づけば…気づけば…。
2時間の上映時間に濃縮された「人生の一片」が面白いの何の。
「どいつもこいつも何でこんなオッサンが…」とは思うのだが、皆が恋焦がれているのは「戦中の輝かしい日々」なのかもしれない。
もう戻れない、希望に満ちた日々に縋りたいのだろう。
終戦後の日々は職にも溢れ、金には困り、まるで陰鬱な日々が続く。
そんな日々の中で縋るのが「戦前」ではなく「戦中」である事が本当に侘しく、救いが無い。
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