ナカザワ

浮雲のナカザワのレビュー・感想・評価

浮雲(1955年製作の映画)
3.9
浮雲って、見るまではもっと純愛とか悲恋映画とかなのかと勝手に思ってたら全く裏切られた。
なーにが「ゴーイングマイウェイといきましょう」だよ、「ご覧の通りの始末でね」って何だよ、勝手な言い訳ばっかりしてしょーもない男だな。脳細胞あんのか?あげく「僕という人間はもぬけの殻だから」とか開き直ってて何一つ自分で決められない。愛嬌のひとつでもあれば許せるけど皮肉屋で偉そうだし、仕事への情熱もないしマジでいいところが見当たらない。そんなモリマに対する高峰秀子の台詞を聞きながら「ほんとそれ」って5回は声に出た。高峰秀子の役はやさぐれてるけど冷静な観察眼があるし常識人だから強くて好き。ふたりを繋げてるのはベトナムでの日々だけ。

鬱々とした内容だけど、BGMで謎の民族音楽みたいなのがずっと流れてるおかげで前半はコメディの様。暗さがだいぶ薄れる。成瀬の描く女性の心理描写と男性に対するシニカルさが、他作品とちょっと違う光り方してると思った。