深獣九

KARATE KILL/カラテ・キルの深獣九のレビュー・感想・評価

KARATE KILL/カラテ・キル(2016年製作の映画)
3.5
疲れた夜は頭空っぽで観られる映画をチョイス。どんなトンデモB級なんだろう途中で眠くならなきゃいいけど……なんて心配は吹き飛んだ!ぜんぜん眠くならなかった。おもしろかった!

幼い頃に両親を亡くした兄ケンジと妹マユミ。女優を目指し渡米したマユミが行方不明に。ケンジはマユミを探し出すため現地に向かう。どうやらマユミはカルト集団に捕らわれているらしい。マユミを救うため、ケンジは敵のアジトに乗り込むのであった。

と、ストーリーはあってないようなもの。この映画は昭和感あふれるアクションを楽しむだけでいいのだ。
タイトルとジャケットはまさにそれ。内容も期待を裏切らない(期待してなくてゴメン)激しい空手アクション。空手というかカンフー要素も濃いが、和製ブルース・リー映画として、千葉真一の再来として観ればヨシ。AではないがBでもない、だがあえてBを目指す。スタッフの志を感じる一本なのだ。

見どころはたくさんあるが、まとめると以下の3つ。

・昭和のアクション映画
・エロゴア
・主演のHAYATEはすごい人真青 ハヤテ


◯昭和のアクション映画
まずはこれ。アメリカという舞台、マッチョを揃えたカルト集団、地下にある闇営業のクラブ、殺人空手、肉弾戦中心の湿っぽい暴力、砂埃の舞う乾いた田舎町などなど。1970〜80年代のハードボイルドな時代の空気感を思う存分吸うことができる。インサートも含めて雰囲気に浸れる。

ただひたすら強い主人公が、徒手空拳で暴れまわる。妹を取り戻すためには問答無用で相手の耳を引きちぎる。生身で銃に立ち向かうため修行する。明け方にひとりで形の稽古。日本刀使いとの対決など、魅力的なシーンが盛りだくさんだ。千葉真一やブルース・リー、ジャッキー・チェンの映画が好きなら間違いなく楽しめる。
変なスローモーションとか引きの画とかも昭和っぽい。

パルクールやスナッフビデオの配信など現代的な要素も取り入れられており、ただのレトロ趣味で終わらせていないのもさすがである。

個性的な登場人物も楽しみの一つだ。

ロン毛でギョロ目のカルト集団リーダーは、女がいたぶられる姿を見ながら手首をナイフでギコギコする。
アイパッチの女は道具使いかと思いきやパワープレーのゴリラ女。得意技はラリアットだ。
マッチョな戦闘員は目の周りが黒い。強いのにスタンガンを愛用。
復讐に燃える女は右腕がフック船長。ショットガンの弾倉をたすき掛けにするランボースタイルだ。戦闘開始にマントを脱ぎ捨てるシーンはとても美しかった。
闇バーを経営するハゲオヤジもザ・昭和のワルで微笑ましい。

こうして並べてみると、ヤングジャンプに連載されている漫画で最近見た気もするし、世紀末伝説でも。こういうの、今も昔もみんな大好きなんだなぁ。

◯エロゴア
乳の露出度が高い。サービスカットというか、スタイルを踏襲しようとする志であると感じる。確かにあの時代は、やたらと女性のたわわが登場していた記憶がある。フォーマットというかそこにあるのが当たり前だったという印象だ。古き良き、と言ったら叱られるだろうか。
この手の映画によくある、唐突なベッドシーンもしっかりと描かれる。また、女性の衣装の布面積が少ないのも嬉しい。
ここであえて申し上げるのだが、私は乳が出ているから喜んでいるのではなく、昔ながらの様式美を愛でているだけなのである。誤解なきよう願いたい。あ、ラストシーンにも乳が。

ゴアもしっかりリアリティがある。血が出れば服が真っ赤に染まるし、銃で顔が吹っ飛べばぐちゃぐちゃくなる。生贄が滅多刺しにされるシーンはちょっとリアルだった。生きたままミキサーで手をミンチにされたり、喉をかっさばかれたり。血を吐きながらゲボゲボしているサービスカットも抜かりない。決して派手ではないがスタッフの気概を感じる。良き。

◯主演のHAYATE(真青ハヤテ)はすごい人
ウィキペディアで少し情報収集したところ、主人公ケンジを演じるのはアクション俳優の真青ハヤテ。古式剛柔流空手の免許皆伝で、国内屈指のパルクール実践者であり指導者。CMや映画のアクション監督も務めるすごい人なのだ。だからアクションシーンもリアリティがあるし、説得力がある。キレもいい。面白くないはずがないのである。


というわけで、タイトルやジャケットだけで判断してはならない映画の見本のような作品。
日本刀使いとの戦いの最中、敵だったはずのハゲオヤジが頭吹っ飛んだままの出てきてアドバイスするシーンは失笑ものだったけど、そんなこんなもひっくるめて楽しめる映画。おすすめ。
深獣九

深獣九