YasujiOshiba

KARATE KILL/カラテ・キルのYasujiOshibaのレビュー・感想・評価

KARATE KILL/カラテ・キル(2016年製作の映画)
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観てきました。感想を一筆書きで。いざ。

たしかに映画は、かつての見世物小屋の出し物であって、世紀末のパリのグランギニョール劇場なんかの伝統を一直線に受け継いだものなのだけど、ずっと時代を下って生まれたぼくなんかは、たとえば1976年の『スナッフ/SNUFF』なんて作品で、ほんとの殺人現場を写したフィルムが流出したなんて触れ込みにすっかり騙されながらすっかりドキドキさせられたものだし、その少し前の1973年には『燃えよドラゴン』の洗礼があって、耳をあの怪鳥音に満たされ、身体はジークンドーの軽やかなステップを真似しようと四苦八苦していたよな、なんてことを思い出しながら、今宵はさらに、文字どおりにも太っ腹の光武監督が、定番どおりに計算されつくしたティッツ・ポロリの出血大サービスなんかしてくれるものだから、おもわず小さく胸震わせると同時に、かつてもいまも映画小僧のままで成長を拒んできたのだよな、なんて自分の脛の傷に気恥ずかしさをも感じつつ、スクリーンに突然の疾風のように動きだす身体が、ポスターの誇張された筋肉よりもずっとしなやかな破壊力を持っていることに目を見開かせられるなんていう、久方ぶりの感覚を味わえたわけだけど、やがてリアルとフェイクのあわいに延長するアクションのパルクールが、その軽やかさを軋ませ、ついには力尽きて砂を噛むことになるとき、あの、後ろ向きに遠ざかる天使さながらの俯瞰のなかでぼくらは、つい今しがたまで感じていた映画的で瀆神的な破壊の快楽が、もはや過ぎ去りつつあることを悲しむしかないという、そんな見事な現代のグラン・ギニョールでございました... ふうっ。
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