記録用

聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディアの記録用のネタバレレビュー・内容・結末

3.0

このレビューはネタバレを含みます

ヨルゴス・ランティモスの作品ということで鑑賞。
個人的にはあまり向いていなかったかなという感じ……。

映画2時間のうち1時間56分が下らなくてラストの4分が面白いから全部許せた!みたいな作品は山ほどあるが、初めて残りの4分で微妙な気持ちになった。
逆に言えばそこにたどり着くまでの1時間56分(実際の長さでは違うが)がもれなく面白かったということなので総評としてはとても良い。

カメラのアングルも音響もそうだが、何よりマーティン以外の登場人物が作中でほぼ笑わないのが良かった。
この病状について明確な回答が出ることは端から期待していなかったので、呪いなのかなんなのか明らかにならない結末も個人的には気にならない。
むしろこのよく分からない"何か"に奮闘する姿に益々結末が気になり前のめりに鑑賞できたので、相当な描写力だと思う。
特に病院の検査など、もういいと言う妻を振り切ってまで全力を尽くした夫が妻に「子供が死にそうなのにマッシュポテトか」と聞かれてじゃあ黒魔術にでも頼れってか、とキレるシーンなんかが個人的に好きだった。

特に印象的なのはボブが髪を切るところで、髪を切り、花壇の水やりを約束し、父のようになりたいと言い、……結局子供が父に命をこう時にできるのはこれが精一杯なんだよなというのがリアルで苦しかった。
殺さないでと言えるほど話の根幹まで踏み込めないし、かと言って黙って殺されるのも怖くていい子になろうとするのかな……。
この作品ボブ以外みんなどこか狂っていたように思う。
だからボブがやたら可愛く見えたのでラストはまた悲しかったけど、この父と母と過ごせというのも酷だな……。

と、ここまでとても素晴らしかったので、ラストで父親がロシアンルーレットやるのはさ〜!
でも人間ってそうだよな。いざ自分がこの立場だったら責任なんてとれないし、選べないし、こうするしかないよな。
人間の心理に正直に描くえぐさとしては100点満点だし、カンヌもなるほどと思う。
でもエンターテインメントとしてはもっと強い落ちが欲しかったなと思ってしまう。
主人公が踏ん切りつけて選ぶとか、むしろ自殺するとか、全員殺すとか。
でもできないのが、人間ってやつですよね……。ボブ……。

本当に面白かったですが、個人的にちょっと残念だった。
でも面白かった……。

父も母も娘もどこか狂ってる家庭で唯一健全だった息子を殺したから聖なる鹿殺しなのかな……。
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