toriten45

聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディアのtoriten45のレビュー・感想・評価

4.1
珍味かな。でも“鹿”より“ロブスター”の方が口に合うかも。圧倒的な後味の悪さと気持ち悪さに品の良さを絶妙にブレンドさせた作風。

「ん〜わからん、なんか不快」最初観た時は、格式だけは高そうだけど変わった風味で正直よくわからないことだらけ。映像も演技も印象深いところたくさんあれどストーリーに頭が追いつかず、シュールで不条理な雰囲気しか捉えられなかったです。

鑑賞後に、モチーフにしている古代ギリシア悲劇との共通点に触れた考察記事をよく目にしましたが、「へ〜!」とはなりませんでした。

呪い?浸食されていくように主導権を奪われていく父…。裕福で幸せそうに暮らしていた4人家族の人間性と醜悪さが剥き出しとなっていく様子に人間の脆さを目の当たりにする作品かな。

娘と息子が歩けなくなりズルズル這い回る……。焼きそばみたいなパスタをパクつく……。家族の中から一人選ぶ……。鳴り続ける不協和音、噛み合わない会話、抑揚のない台詞回し。

明るく清潔な映像が続くのに、全編を通してジットリ気持ち悪く不穏な雰囲気に満たされた中で、なんら納得のいく説明のないまま登場人物らに過酷な運命が課せられていきます。体温低めに繰り広げられる、不穏で緊迫したおぞましい恐怖。

ホラーともいえないしサスペンスでもない。やっぱり珍味だな。好みになりそう。
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