晶

聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディアの晶のレビュー・感想・評価

3.5
ホラーのようでホラーでなく、ミステリーのようでミステリーでもない。
「哀れなるものたち」「ロブスター」の次に観た。なんだかタイトルがカッコいいので一番期待していたものの、この三作の中では一番地味だった。
ただ、映像は美しい。今回はずっと微妙にトラックし続けるカメラワークと、神の視点のようなはるか頭上からのショットが特徴的。それもまあ、上記二作に存在する一生忘れられないショットの数々に比べれば、特徴というのも憚られるくらい地味な特徴だ。
そう考えるとなにもかも、この順番で観てしまったこちらの鑑賞態度のせいかも知れない。
「ヨルゴスなんだから」というフィルターのせいで、呪いだか魔術だかの設定の異常性も「そういう話なのねはいはい」とすんなり飲み込んでしまったし、そうなると、父親の愛情の薄い行動も母親の子供を犠牲に自分が助かろうとする言動も、くすぐり程度にしか感じない。いやいやヨルゴスなんだからもっと飲み込みづらいことが起こるはずだとこちらが勝手に課した高いハードルを越えてくるヨルゴスを待ち構えていたら、やっときたのがぐるぐるショットガン。いや、笑ったけど。
あるギリシャ神話を題材にしてるとネットで見たが、その内容を加味した上でも他二作のような現代に通じる寓意があるようには感じられなかった。
晶