Yu

聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディアのYuのレビュー・感想・評価

4.0

不穏
不穏
不穏
終始これ ←

爆音のように轟くSE。
誰かが観察しているようなカメラワーク。
そして、演者たちの、何を考えてるか分からない演技。
予告編で煽った期待を裏切らない最高の演出だ。

コリン・ファレルとニコール・キッドマンの共演といえば、同年に制作され、同じくカンヌで監督賞を受賞した「ビガイルド」を想起せざるおえない。
今作を先に撮影してから、「ビガイルド」とのことで、結末を観た後にそれを知るとなんだか感慨深いw

撮影当時40歳のファレルは今作では老けメイク全開で、49歳のニコールに歩み寄った形か。でも、ニコールの若さに関してはもはや言うまでもない。
そして「ダンケルク」で一躍注目されたバリー・コーガン。彼の怪演は眼を見張るほどで、どことなく「コクソン」の國村隼 を彷彿とさせた。

物語の結末とは別に、今作の面白さは、”人を服従させたがる人間の愚かさ”を描いている点にあるように思う。

天は人の上に人を造らず人の下に人を造らずという有名すぎる言葉があるが、
平等に生まれた人間は、豊かに生きるために自己成長に努め、競争社会の中で人生を歩む。
そこには主従関係というものが、当たり前のように存在している。
それは辛いものばかりでもなく、恋愛関係における駆け引きも主従関係の奪い合いと言えるだろう。

両親ともに医者という職業で、エリート意識の高い主人公家族。
そこには支配し服従させる価値観がデフォルトとして備わっており、物語が進むにつれ、夫婦間、親子間、姉弟間で主従関係の変化していく様が克明に描かれている。
それは時に残酷かつ滑稽な表現方法で。

そしてもちろん、今作の鍵である、バリー・コーガン演じるマーティンと家族各々の間でも、主従関係がどう描かれているかを注目してもらいたい。
彼だけは最初から最後まで、主従関係ではなく平等関係にこだわっている。
スパゲッティの食べ方で父親と自分を馬鹿にしたけど、よく見れば皆同じ食べ方じゃないかと。
ほんと、人間の愚かさほど、観ていて不快なものはない。
Yu

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