あでゆ

聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディアのあでゆのレビュー・感想・評価

4.4
心臓外科医のスティーブンは、美しい妻と二人の子供と一緒に郊外の豪邸に住んでいた。しかしある少年を家に招いたことをきっかけに、子供たちが突然歩けなくなり目から赤い血を流すなど、異変が起こり始める。スティーブンは、究極の選択を強いられることになる。

滅茶滅茶しんどい映画だったけど、最後まで神側のマーティンの行動はフェアなストーリーだった。
冒頭でスティーブンに対して父親になってくれるなら許すとチャンスをあげておいて、そレを拒否されたために家族に対して呪いをかける。
それもフェアプレイ精神の名のもとに家族の中から一人だけ。ここでミソなのが、嫁には呪いの効果が現れない。つまり、嫁は大事じゃないんだよな、彼にとって…。

ところが人間側は欲深いので、全くフェアじゃない。
母親が「殺すなら子供よ」って命乞いしたりとか、先生に二人の子供のうち「どっちのほうが優秀ですか!」って聴いたりとか、完全に損得に囚われてるところに人間と神の違いを感じる。
そして最期には、明らかに父親がフェアを装って息子を狙っているのもきつい。少なくともそう見えた。

カメラワークとBGMもこれでもかというほどに人工的に作られている。
例えば、マーティンが出てくるシーンは基本見上げるような絵作りになってて、そうでない人間映すときは上から撮ってる気がする。それにマーティンを中心にして、他のキャラを画角の隅っこに追いやることが多い。後半で嫁がマーティンに敬意を表すのもそうだけど、カメラすらも敬意を持っているんだよな。
特に息子が歩けなくなるシーンは徹底的にカメラを引いて上から傍観するようなカメラワークになっているのが象徴的。
左右対称の画作りがとても多くて『シャイニング』とかウェス・アンダーソンぽかったけど、これも神によって統御された世界っていうことなんだろうか。

あとちょっと妙にギャグっぽいところがあって調子狂うのがおもしろかった。
あでゆ

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