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聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディアのyukieのレビュー・感想・評価

4.0
小学生のときに、
「幸」の漢字の由来は
手かせの象形で、手かせだけで死なずにすんで「幸せ」という意味あい。
というのを読んでぎょっとしたときと
同じような気分になった。
それで“幸せ”でいいの?それが“幸せ”なの?


本来人間は動物の中でも他の動物よりも悍ましくたちが悪い生物、ということを思い出させられる。
この100年か200年で、無数の犠牲により“人権”が確立されて、私は今の生活をしている(させてもらっている)わけだが、
自分ではない他人を“気に入らない”という単純な理由で公開処刑する、銃乱射する、実の子供を殴って死なせるような“人間”の一面にまで、果たして人権は必要なのですか?と突きつけられる。

「イピゲネイア」の聖なる鹿に
代われるのが、
ボブなのが必然としても愕然とする。


(殺されるかもな。)
と腹をくくった時の
女の出方が凄く怖い。
やけっぱちで、寵愛を懇願する。
消されないために。
犠牲になるのが、子供だろうが親だろうが兄弟だろうが構わない
自分でなければ。
生き残るべきは私。
“だって、私は新しい命をうみだすことができるから。”
女の驕りだ、業だ、ぞくっとする。

“愛を放つの。
(彼らに)消されないために。”
We can light it up up up
So they can’t put it out out out...

エリーゴールディングのバーンが
いきなり怖くなってしまった。
ポップスなのに笑 好きなのに。

家族を巻き込む贖罪。
神話になぞらえるならば
ラストは伏線で、
必ずや復讐は続く。
異常な映画にも見えるが
毎日のように虐待死や、
家族殺しのニュースを目にする。
昨日の銃乱射の犯人は無表情だった。
この映画を異常と言い切れるかどうか
自信がなくなる。

悪趣味だし万人受けしないと
わかっていて、
(おそらく撮影手法などを心から楽しみながら笑)
人間の化けの皮を堂々と追及する
ヨルゴスランティモスにしか
つくれない映画。
今作はちっとも笑えない。
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