note

マンハントのnoteのレビュー・感想・評価

マンハント(2018年製作の映画)
3.7
西村寿行の小説で、過去に高倉健主演で映画化された「君よ憤怒の河を渉れ」をジョン・ウー監督がリメイク。オール日本ロケで映画化したサスペンス・アクション。何者かに殺人事件の罪を擦り付けられた中国人の国際弁護士と日本の刑事が手を組み、国籍を超えた友情を育みながら事件の核心に迫っていく。

大河ドラマのような歴史ものに傾倒していた「アクション映画のマエストロ」ジョン・ウー監督が久しぶりに純粋なアクション映画に復帰した待望作であったが、日本を舞台にしながら、日本人に酷評の嵐だったのが残念でならない。

まずは褒めたい。
規制の厳しい日本で激しいアクションを描いたことを私は素直に賞賛したい。
ジョン・ウー監督作品でお馴染みのアクション演出が、我が日本で次から次へと炸裂する。
「白い鳩」「派手な乗り物アクション」「狭い建物内での壮絶な撃ち合い」「スローモーションの多用」etc。
ファンにとってはその様式美は歌舞伎のそれに似て「待ってました!」と声をかけたくなる。
規制の厳しい日本でも工夫次第では世界に通用できる邦画のアクション映画が撮れるのでは?という期待を抱いた。

ストーリーにおけるジョン・ウー作品の特徴「呉越同舟の男たちが育む友情と絆」も熱い。
何者かにハメられた男の逃亡劇という物語は共通しているものの、オリジナルにあった女性とのラブロマンスは本作リメイク版では大きく後退。
代わりに追う者と追われる者が共闘する男同士の友情がかなりクローズアップされている。
生き方も背景も異なる敵対関係の2人の男が、正しいことをしようとするうちに絆で結ばれる展開は、ついに国籍までも越える。
日本のような単一民族国家ではない、他民族国家の世界の国々での興業も視野に入れているのだろうが、この映画には敵対行為はあっても人種差別的な言動がないのが素晴らしい。
キャストも日本だけでなく中国、香港、韓国から集め、言語が異なる中で良く話をまとめたものである。

日本での酷評の多くは「日本ではあり得ない」と「アクションが古くさい」というものに分かれる。
まず日本で民間人が銃を所有し、あれだけの銃撃戦や追跡が行われるのはオカシイというものが多い。

しかし、アクション映画は元々荒唐無稽なモノである。
海外のアクション映画に見られる爆破や銃撃戦が日常的に行われるだろうか?
高倉健主演のオリジナルにしても、着ぐるみ感満載の熊が出てきたり、逃走用のセスナ機を自衛隊のジェット機が追ったり、新宿を馬で疾走したりと、ツッコミどころ満載の映画だ。
本作もそういう荒唐無稽を大らかな気持ちで許さないと楽しめない。
アクション映画とは「あり得ない」モノなのだ。

「アクションが古くさい」は、さすがに監督のファンの私でも幾分か同意する。
本作のアクションは「老舗の職人の味」であるが、既に80〜90年代に監督自身が香港時代に行ったものばかりだ。
「ブラック・レイン」でリドリー・スコット監督が諦めたように、日本でハリウッド並みの爆破は不可能なので仕方ないが、オリジナル同様、謎解きと追跡に特化しても良かったのではないかと感じた。
監督は「ペイチェック」でその片鱗を過去に見せているだけに。

ともあれ、本作はジョン・ウーならではのアクションが久しぶりに味わえた満腹度の高さがある。そして監督の日本映画愛に溢れた作品であることは素直に評価したい。
note

note