Ayako

ラストレシピ 麒麟の舌の記憶のAyakoのネタバレレビュー・内容・結末

3.5

このレビューはネタバレを含みます

時代を越えて同じレシピを介してつながり合うJulie & Juliaのような、戦中の満州と現代の日本2人の天才料理人の生き様を描いてる作品という程度の認識で見始めましたが、思った以上に一本線でつながったストーリー展開で、良い意味で裏切られました。

最後の料理人として依頼人の思い出の品を作る充が伝説のレシピを再現する歴史系の映画かなという印象で、見始めましたが、物語が進むにつれて、
現代を生きる充と、激動の満州を生きた直太朗の物語がひとつの線となって浮かび上がってくる構成で、どんどんと引き込まれていきました。(ただ、そこに行き着くまでの序盤が説明的で少々長いなという感もありましたが。直太朗が出てくるまでが結構長い。)

実は祖父と孫の関係にある直太朗と充の共通点が料理の天才という才能の部分だけでなく、「理想主義的」、「完璧主義」、周りを信用できない孤高の料理人という性格的な資質も共通していて、最後の種明かしで祖父と孫の関係にあることも納得。(料理の才能に恵まれながら、その不器用な性格ゆえに周りと衝突するという設定ゆえ、直太朗役の西島英俊も、充役のニノもぴったりな配役だなーと感心しっぱなしでした。)ストーリーの構成で素敵だなと思ったのが、両親に先立たれて児童養護施設で孤独を感じながら育った充が、周りへの不信感を乗り越えるきっかけとなるレシピが実は祖父の直太朗が残したものだったというところです。「探していたものは、実は身近にあった」という終盤のセリフにもある通りで、自分には縁がないと思っていた家族愛が、祖父・母の命を賭して残され、探していた幻のレシピという形で発見されるという過程がいいなぁと。(そして、付け加えると、そのレシピを作る過程こそが、祖父である直太朗が充と同じチャレンジを乗り越えるステップだったというところで、普通とは違った形で、祖父から孫への大事な教えが伝えられれているのだなと思うとさらにじんわりきますね。)

不器用だけれど、夢を追い求め、自分の料理人としての信念を貫き通した山形直太朗という天才料理人の一代記でもあります。
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