なっこ

僕のワンダフル・ライフのなっこのレビュー・感想・評価

僕のワンダフル・ライフ(2017年製作の映画)
3.2
世界には一匹の犬しかいない

そんな風に書いてくれた人がいる、
愛犬を亡くしたいま、私も心からそう思う。

この世界にいる犬は全て一匹の犬なんじゃないかって。

実は、幼い頃に『子猫物語』を見て号泣した経験から犬猫ものは見ないことにしてきた。
でもここのところあまりにも喪失感が大きいのであえて映画の持つ物語の力に頼ることにした。

これはとても素敵なお話。

犬が人間の孤独を嗅ぎ分けることは確かにあるだろうし、犬にとって飼い主の幸せは自分のこと以上に大事なこと。

そして彼らは常にそのとき、その瞬間の生きる喜びに溢れている。生きていること、大切な誰かとただ一緒にいるそのときを、心から楽しむためにだけ生まれてきた存在だと思う。それは、圧倒的な「死」の沈黙と存在感を身近に感じたいま、私には身に染みていること。
谷川俊太郎さんの詩ではないけれど、いま生きているということを肌で感じるには命の終わりを目の前にすることが最も近道なんだと思い知った。

映画の中で犬は3回生まれ変わる。
多頭飼いをせずに一匹ずつ仔犬から飼うならば、確かにそのくらいのスパンで犬は世代交代していくはず。

犬が転生しているかどうか、そう信じるかどうかは自由。けれど、複数の犬を飼った経験から、最初の犬にしてやれなかった後悔は次の犬をもっと可愛がることで供養になると信じて私は犬と過ごしてきた。愛犬を亡くして悲しみの中で生きるのは辛いけれど、わたしが今ちゃんと上を向いて生きることを一番強く願ってくれるのは愛犬のはずだと信じて歯を食いしばって普通の生活を続けることを心がけてる。
この悲しみは背負い切れるはずだと自分に言い聞かせて。

以下は、最近読了した『ペットが死について知っていること』に載っていた詩の部分的な引用、

「悲しくて仕方のないときも、心の奥をのぞき込んでごらんなさい

すると気づくにちがいありません

かつては喜びであったことのために、

今は泣いているのだ、と」

《カリール・ジブラーン詩集『預言者』収録の「喜びと悲しみについて」佐久間彪訳》

犬との生活は喜びに満ちている。それは、彼らの生が喜びと共にあるから。人はそれを分けてもらうことができる。人と生きることを選んだ犬という種には、そんな気質がDNAに刻まれている。彼らのキラキラとした眼を見つめるたびにそう思う。
世界には一匹の犬しかいない。
私のところにいた犬も明日町のどこかで出会う犬もきっと同じ犬。
そんな風に思うのは馬鹿げているのかもしれない。
けれどそんな風に愛の裾野を広げて、今地球上で生きている犬全てを愛すくらいの気持ちで生きようとすれば、この終わりのない悲しみも少しは薄らいでいくような気がしてる。
なっこ

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