HicK

サバイバルファミリーのHicKのレビュー・感想・評価

サバイバルファミリー(2017年製作の映画)
3.7
《もはやエンタメ作品として見れない危機》

【震災】
エンタメ作品だが、ライフラインが止まってしまったという劇中の設定は、様々な災害を経験した人たちにとっては過去を思い出させるリアリティがあったように思う。自分にとっては、東日本大震災等で電気、ガス、水道が止まってしまった事を思い起こさせる内容だった。見方を変えると結構深刻なディザスタームービー。

【狭い視点】
ディザスタームービーというと、全体像を見せて国家ぐるみの視点で見せる作品が多いが、この作品はあくまでも一家族の物語であり、家族視点で狭い視野からでしか状況が把握できず全貌が見えてこないというのが面白い。なにより親近感が湧く。この点が自分の経験と照らし合わせやすい要因になってた。

【演出】
音楽は最小限にとどめ緊迫感があらわれていた。都会は無力化し、田舎の生命力は増す。世界がOFFになると人間がONになる。そのメッセージもよく伝わってきた。

【ただ】
それだけに、エンタメ作品だからと言って所々に出してくるコメディ要素が不必要に感じてしまう。特にロードバイク一家や高速をスケボーでヤッホーと駆け抜ける人など、状況が緊迫しているのに登場人物が楽観的すぎてその背景に合っていないのが気になってしまう。主人公たちもアニメキャラのように個性が濃く、この過酷な状況ではかなり浮いて見える。まぁ、すべてにリアリティーを求めてしまうとエンタメとして機能しなくなってしまうが…。それだけ災害描写が身近に思えたって証かもしれない。

【総括】
思った以上に考えさせられたし、過去の経験を思い出し胸が痛くなった。そしていざとなった時の都会の無力さ。これを娯楽作品として扱うのはもったいないと感じるほどの状況描写がお見事でした。
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