MasaichiYaguchi

サバイバルファミリーのMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

サバイバルファミリー(2017年製作の映画)
3.9
「ウォーターボーイズ」、「スウィングガールズ」の矢口史靖監督の最新作は、電気が消滅した社会でのサバイバルを繰り広げる一家を描く。
東日本大震災や近年発生した自然災害の被災経験の方なら実感として分かると思うが、ライフラインにおいて電気が止まると、ガスも水道も使えなくなってしまう。
それはガスや水道の供給システムは電気によって運営されているから。
公共施設やビル、工場等は自家発電システムを備えているところも多いので、この映画で描かれたように電気が社会から完全に消滅してしまう
ということはないと思うが、改めて何か異常事態が起こった時の現代ハイテク社会の脆さを痛感する。
本作でこの異常事態をサバイバルしていくのは、東京に暮らすごく平凡な一家の鈴木家。
本人は一家の大黒柱たらんとしているのだが、いまいち頼り無くて冴えないお父さん、やや天然なお母さん、無口で無愛想な息子、スマホが手放せない今時女子の娘という4人。
彼らは電気が戻らず、生活の見通しが立たない東京を離れ、電気や食糧と水を求めてサバイバルの旅を始める。
映画はそのサバイバルの旅を、リアルなシュミレーションでドキュメンタリータッチで描き出す。
ある意味本作はサバイバル・ロードムービーと言えると思うが、鈴木家はこの過酷な旅の中で様々な試練や人々と出会う中で、脆弱な都会人から少しづつ逞しく、そしてバラバラだった家族が一つに纏まっていく。
そのことは、オープニングとラストにおける家族の姿に端的に表れていると思う。
この過酷なサバイバルの旅で泥だらけ、傷だらけになって悪戦苦闘していく家族を、小日向文世さん、深津絵里さん、泉澤祐希さん、葵わかなさんが熱演する。
ハイテク現代社会が崩壊した中でのサバイバルをモチーフに、本作は家族の在り方、生活する、生きるということの意味を見詰め直している。