BK477

サバイバルファミリーのBK477のレビュー・感想・評価

サバイバルファミリー(2017年製作の映画)
3.5
「ある日突然、全ての電気が使えなくなったら?」という
ブラックアウトを題材とした作品。 4人の家族が東京から鹿児島までを目指す、ロードムービー。
そうです、ロードムービーなんですね実は。

突然ですが「電気を大切にね!」という言葉を覚えていますか。
東京電力のマスコットが言う定番のフレーズだったのですが、
東京電力が9.11に「悪者」になってからというもの、
聞くことが無くなってしまった言葉です…

この映画では、あんまり殺伐とした側面は描かれない「やさしい世界」になっています。殺人も強姦も映されないし、ほとんど「死」が描写されません。本当ならば、

全ての道路では数え切れない事故が発生し、
全ての飛行機は墜落し、
全ての原発がメルトダウンを起こし、
全ての医療機器が停止して病人は死に、エレベーターに閉じ込められ、
何十万・何百万という人が一瞬で死ぬことでしょう。

原発がメルトダウンしても、何の警報もならず、誰も気づかぬまま、何十万人という人が重度の放射能汚染に苛まれ、何百年も生物が住めない場所がいくつも生まれることでしょう。

街は文字通り、屍の山となり、腐臭が漂い、疫病が蔓延するでしょう。

老人や病人、貧困層などの社会的弱者から瞬く間に死んでいき、

食料や物資は行き届かず、都会から人は消えるでしょう。

一週間後に一体どれだけの人が生き残っていられるのか、
考えるのも恐ろしいです。

そのようなあまりにも暗く厳しい現実が、描写されていません。
本当のシミュレーションでは無い、
ということを念頭に置いて視聴したい所です。

この映画の監督はウォーターボーイズやスウィングガールズ、ハッピーフライトなどの矢口監督で、製作もフジテレビですので、言い方は悪いですがそういった過酷な現実からは目を背けている内容になってます。

あくまで、できるだけコミカルに、やわらかく、身近な事例で、危機感を提唱する作風です。

そして、この家族が接する事となる人達も、善人が多いです。
「私だったこの人は殺すだろうな」「ここは盗むだろうな」「ここは騙すだろうな」TWDなどの西洋的思考に脳が侵されている私は、何度もそう思いましたが、

みんな、それなりに親切ですし、良心に基いて行動しています。
本当だったらそんな上手くいかないでしょうが、本作は比較的やさしい世界です。

そんな世界ですが、シビアさもゼロではありません。
一家四人が、その世界で生き残ることができるのか?
旅の果に鹿児島へたどり着けるのか??
多くの方に視聴して頂きたいと思う、そんな一本です。

そして、「電気を大切にね!」という言葉の重みを、噛み締めましょう。
備えましょう。常に。
BK477

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