Violet

サウンド・オブ・メタル ~聞こえるということ~のVioletのレビュー・感想・評価

4.2
2021年アカデミー賞作品賞・主演男優賞・助演男優賞・脚本賞・音響賞・編集賞の6作品にノミネートされているAmazon Prime限定配信の作品。アマプラ加入してる方は是非見て欲しいです!
とりあえず音響賞は間違いないのでは?
鑑賞時はイヤフォンをつけることをお勧めします🎧

▼あらすじ
メタルドラマーのルーベンは、聴力を失い始める。医師に今後も悪化すると言われ、ミュージシャンとしての自分も人生も終わりだと考える。恋人のルーは元ドラッグ依存症のルーベンをろう者のコミュニティーに参加させ、再びドラッグに走ることを防ぎ、新しい人生に適応できることを願う。ルーベンはろう者のコミュニテーで歓迎され、ありのままの自分を受け入れるが、新しい自分とこれまで歩んできた人生とのどちらかを選ぶのか葛藤する。(Amazon Primeから引用)




✂︎----以下ネタバレ---------

























この作品では「耳が聞こえる状態」「耳が聞こえない状態」「補聴器をつけた状態」という3種類の「音の聞こえ方」が表現されていて、これがどこまで本物と近いのかどうかはわからないけれど、すごい音響体験をしたという感覚がある。映画館で見たかったなあ〜〜。勿体ない。

補聴器を付ければ前のように音が聞こえると思っていたRubenが補聴器をつけた時の描写は本当に辛かった。トレーラーを売って高い金額を払って、deaf community を追い出されてまで行った手術の結果がこれ。

補聴器を使用した時のガサガサとうるさい雑音は心まで刺激してくるようだった。

Joeが言っていた”Stillness (静寂)”
音が聞こえないことを「可哀想だ」とか「不便だ」とか「治らないのか」とか、わたしはずっとそういう見方しかできていなかったんだなと痛感させられた。”Not something to fix. (治すものではない)”その言葉を聞いた時に、自分はなんてエゴ的な人間なんだろうと思った。
耳が聞こえる人は生活や自然の音がおびただしく聞こえてくる。包丁で野菜を切る音や、家族が階段を降りてくる音、パソコンのキーボードを打つ音、街ゆく人の話し声。本作の序盤でも「生活の音」をクローズアップしていたし、わたしはこの音がすごく好きだ。
けれど、耳が聞こえる人にはJoeがKingdom of Godと表現した「静寂」に包み込まれる体験は絶対にできないのだ。

マジョリティの意見に凝り固まったわたしの考えを覆してくれるような「耳が聞こえないからこそのプラスの側面」。

物語の最後、耐えられなくなり補聴器を外したRubenの表情が少し穏やかになった瞬間が忘れられない。

▼「聞こえるということ」という副題
個人的にはこの副題は映画の意図していることと反することを表してしまっているのではないかと思っている。
この作品で伝えたいことは「聞こえる」ということではなく「静寂」である。ここでまた「聞こえる」とすることでマジョリティ的なエゴが働くのではないだろうか...
副題がない方が変にミスリードを起こすこともないのではないかと思う。

Have you had any moments of stillness? Cause you’re right, Ruben. The world does keep moving, and it can be a damn cruel place. But for me, those moments of stillness: that place, that’s the kingdom of God. And that place will never abandon you.ーJoe
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