Panmogu

西北西のPanmoguのネタバレレビュー・内容・結末

西北西(2015年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

韓英恵とサヘル・ローズ主演で同性愛や訪日・在日外国人、宗教などマイノリティにフォーカスを当てた作品。けして同性愛のみを主軸にした映画ではなく、タイトルから見てもわかるように宗教的な軸や、途中大学の講義シーンでは本物の教授に戦争を、それも日本側からだけではない視点で語らせるなど、狙っているところはわかる。わかるのだが、色々と足りない。
まず、情報の出し方が伝えたいこととアンマッチである。言葉をわざと字幕で出さないなど、観客に答えを与えず、それぞれで考えてほしいというのは頷けるものの、あまりに丸投げというか無責任に感じる。作り手のオペニオンがまったく出せないのは、逃げているというより、俺は答え知っているから君らも見つけてごらん、と上から目線にも下手をすれば捉えかねない。視聴者が考察を持てるマージンというのは下絵があり色がない塗り絵みたいなもので、絵も描いていないただの白紙とは違うのだ。
そして、同性愛というまだまだインパクトが強いテーマに対して、ビジュアル的にも強すぎるのと、ほかのテーマが弱いこともあって、どうしても同性愛という事ばかりにフォーカスが行ってしまう。タイトルを西北西にしたのも一種の先手なのかもしれないが、作品の中では霞んで見えてしまう。タイトルの意図はわかるし、一番伝えたかったのは、サヘル・ローズが企業面接で言葉に詰まるシーンであろうというのもわかる。それまで、多様性や価値観の違いを口にしてきたのに、自分は同性愛者を拒んでいる。宗教的マイノリティである自分が他のマイノリティを認めていない、と気づくところに、単純なマジョリティvsマイノリティという対立構図ではなく、マイノリティvsマイノリティという輪が生まれているところが視点として面白い。言及していないものの、電話で家族や「西北西」とつながり、最後には「西北西」へと帰っていくのも興味深い。ただ、ほとんどの人はただの同性愛映画として受け止めるだろう。
そもそも一般受けは狙っておらず、映画を読み取れる人向けに作ったのであろうし、それであれば普通の映画とは一線を引いてマージンを広めにとったのもうなずける。なにもかもマスにしていく必要はなく、作家性の強い作品は嫌いではない。大衆に向けたメッセージではなく、対話なのであれば、いや僕のこの映画を見る人々のレベルからいって同性愛が主軸ではないことはみんなわかるはずですから、というのであればそれでもいいだろう。だから、ここであげた問題も実際には問題でないのかもしれない。ただ、全体的にそれぞれのマイノリティに対して、もう少し寄り添えたのではないかな、とも思うのである。違う輪をリンクさせていくからこそ、他のマイノリティにも理解を示せるような見せ方、一般の視聴者も意識した作り方をもうすこししてみてもよかったのではないか。
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