EDDIE

荒野にてのEDDIEのレビュー・感想・評価

荒野にて(2017年製作の映画)
4.0
“孤独”と“無力さ”に成す術もなく少年は旅に出る。老馬の“リーンオンピート”に自己を投影し、一つの憧れと希望が砕け散ったとき少年は何を思ったか。喪失とともに安住の地を求める姿に歯痒さを感じる。

こんなにも救いようのない物語はかなり辛いですね。最後の最後に少年に希望を見せてくれたものの、それまでの彼に訪れる苦難が厳しすぎます。
イギリス出身監督による作品ではありますが、舞台はアメリカ北西部。貧困に喘ぐ人々の暮らしをまざまざと見せつけられながらも、主人公の少年チャーリーはまだ恵まれていたのかもしれません。
ただ、そこで彼に訪れる事件。これによりチャーリーの人生は大きく狂わされます。

鑑賞者である私は、なぜ彼のように真面目な少年がこんな目に遭わなければならないのかと悔しさすら感じたほど。
そんなチャーリーの希望の源だった競走馬のリーンオンピート。彼はレースで結果を残せなければ殺処分を受けるというさらに過酷な人生を歩んでいます。
あるとき、チャーリーは殺処分が秒読み状態のリーンオンピートを連れて旅に出るという選択をとります。

いやはやこの旅に出る決心のきっかけとなった出来事も、その後の旅での事件も、すべてにおいてチャーリーが無力である現実が突きつけられます。
途中明らかな犯罪行為に走るチャーリーについては、普通に考えると理解し難いし、言い訳のしようがないわけですが、それもこれも彼の境遇のせいでもあると言えるんですね。

劇中ここまで心苦しい感情を体感するとは思いもしませんでした。何せ馬との共生によって豊かな育みを見せるような和やかなストーリーを思い描いていたので。
そういう意味では虚をつかれました。

孤独に打ちひしがれたとき、それでも安住の地を求め彷徨う。私たちにとって理想の場所とはどこなのでしょうか。
無償の愛がそう簡単に手に入るものではないと痛感させられました。
チャーリーの旅はその後も続くのかと想像を掻き立てられる心痛ましい作品ではあるものの、極力演出で魅せる作風がとても素晴らしい佳作でございました。

※2020年自宅鑑賞316本目
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