MOON

あゝ、荒野 前篇のMOONのレビュー・感想・評価

あゝ、荒野 前篇(2017年製作の映画)
3.9
菅田将暉とヤン・イクチュンの魅力が全開でした。濃厚で泥臭い作品に放り込まれた時にこそ本領を発揮するんじゃないかと思わされる このお2人。作品の世界観に見事に溶け込んで、演技なのか素なのか分からないテンションのお芝居で湧き立つ実在感。そこにいるのは新次であり建二でありました。

優しすぎるがゆえに勝負に徹しきれない建二。憎しみによって強くなっていく新次。この対照的な2人が後篇でどう変わっていくのかがとても楽しみ。

ただ自殺フェスのパートが死ぬほどつまらなくて、別の映画を見せられているような不快感。後篇で新次と健二の関係性を変えていくエピソードに繋がっていくパーツなのかもしれないけど、長いよ!って思ってしまったし、福島や原発問題、徴兵制度?までぶち込んでの社会風刺的な表現に嫌悪感すら覚えました。それは別の作品でやったら良いのでは?何を見せられてるんだ感がハンパなかったです。あれがなければ4点台をつけたかも。

しかし菅田くんはホントに素晴らしかった。良い役者さんである事は以前から分かっていたけど、目で雄弁に語る語る!冒頭の死んだ目。建二と話す時のキラキラした人懐っこい目。互いの過去を語り合う時の憂いの目。試合中のギラギラした目。殺気や憎しみに満ちた目。いちいち感情を揺さぶられました。

目で語るといえば山田裕貴くんも素晴らしかった。新次との最初の再会シーンで押さえつけられながら睨む目の鋭さには圧倒されました。あそこは菅田くんにも負けてなかった。新次と向き合うことを決めた時に一瞬で空気が変わるのも凄かったです。

ヤン・イクチュンさんはいわずもがな。彼が涙ぐむと自然とこちらも泣けてしまう。建二の孤独と優しさに何度もウルウルしてしまい、1番気持ちが入ってしまった。

芳子演じる木下あかりさんも独特のエロさがあって素敵だったし、ユースケサンタマリアやでんでんさんもこの上ないハマり役。高橋和也さんの胡散臭さも最高でした。キャスティングは完璧!

後篇はかなりヘビーな展開になりそうですが、前篇が某パート以外はかなり良かったので失速しない事を祈ります。
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