映画ケーン

HELLFIRE:劫火/ヒロシマからの旅の映画ケーンのレビュー・感想・評価

4.5


広島と長崎で実際に存在した文字通りの地獄を描く夫婦に迫る。



この円盤には2つドキュメンタリーが入ってて、2つ目の『HELLFIRE:劫火/ヒロシマからの旅』での取材対象者が描いた絵本が『ひろしまのピカ』というもの。その内容をドキュメンタリーで読み聞かせみたいにするのが1つ目。


『ひろしまのピカ』
この絵本は実際手に取って読んだ訳じゃないけど、正直このドキュメンタリーの演出はどうなの、って思う。

内容はある家族が被曝を受け、そこらじゅうは燃えて死体だらけの地獄見る、というもの。

何が不満かっていうと、やけにお涙頂戴し過ぎな所。核爆発が起こった後、日常(戦中は「日常」と言えないが便宜上)が奪われて父が死に、その他も大勢の人が死んだ。
そこで悲しげに音楽を流して日常へフラッシュバックしたり…。その「沢山の人が死んで悲しいわね」って視点が(勿論悲しいんだけど)「非人道的な武器」「被曝の地獄の様な死体の山」とかの”事実”を薄めて単純な娯楽として消化されてしまいかねない。
だから、絵本ではやたら原爆投下前の日常がサッパリとしか描かれていないんだと思う。感情移入させる事が目的じゃないから。あの絵本淡々とは「事実」を伝えようとしているのみ。なのにやたらと戻って悲しげな音楽流して。それってどうなの。

僕は冷戦の後に生まれてて当然第二次大戦とかの戦争の恐怖だとかは全く分からない。被曝経験者との関わりも無いしそういった話を知人で聞いた事もない。だから、そういった経験がある人は違う考えを持っているかもしれない。
でも、だからこそこういった作品が僕達に「事実」を届けてくれる訳で、それによってのみ僕とかは知る事が出来る(教科書とかで分かるけど、悲惨さそのものを描くのは芸術のみ)。
でも、それをお涙頂戴的な事にするのはちょっと信じられない(上記の経験がある方で意見や考えがありましたら、いつでも構いません。コメントお願いします🙇‍♂️)。


『HELLFIRE:劫火/ヒロシマからの旅』
既に書いた様に、こっちは原爆の絵を描き続ける夫婦を追ったドキュメンタリー。

夫婦2人共同で描くそう。お互いがお互いを補強し合って1つの作品を作り上げる。

悲惨な被曝の絵であっても、女性の乳房や指は美しく描くらしい。
確かに美しい。半裸、全裸の黒焦げた女性が官能的に描かれている。
それは生そのものの肯定。

日本が被害者の原爆の絵を描き続けていて、そこから日本が加害者である南京事件の絵も描いていってるのは興味深かった。更に、地獄まで描いている。
「死んだ後に行く世界は地獄だ。天国は無い」と。

不満が1つだけあって、2人が普段どんな会話をするのか、みたいなのは見たかったな。作品と原爆の方に話が行き過ぎて、この2人がどんな人か、みたいのが見えにくかった。経験者以前に人としてどんな方なのか気になった。
映画ケーン

映画ケーン