きぬきぬ

新感染 ファイナル・エクスプレスのきぬきぬのレビュー・感想・評価

4.2
なんて凄い!素晴らしいゾンビ映画!凄い面白い!!
面白いけど面白いって表現を使いたくないくらいに、もう悲しくて、愛に泣けてしょうがなかった。

誕生日の娘の希望で、家を出た母親の元へ送り届ける為、ソウルから釜山行高速鉄道に乗車した父娘。不穏な町を後に走り出した列車の中でも感染が拡がる。現状はどう見ても暴動でないのだが、列車内TVの報道は暴動と伝え、状況も不明のまま、逃げ場無く釜山へ向かうしかない乗客たち。

ホラーだけど決死のサバイバルアクション味が強い。
ゾンビ映画に付き物のグロ描写は抑えられ、怖さをグロではなく、あくまで釜山行きの過程で垣間見せるパンデミックの恐怖として描写し、列車の乗客となった人々以外の感染の悲劇を敢えて見せない演出も不安と緊迫感を煽って良いし、列車や駅の構造を生かしてるのも良い。
とはいえ場面によっては、波のように押し寄せて来る感染者たちもほんと怖いけれど、仕方がないかもしれないがただ怯え保身に走る人間も怖い。それ故絶望的な状況下で心ある行動をする愛ある人たちが強く、なんて格好良いんだ。
一見強面のマ・ドンソクさんの漢気溢れる男は妊婦の奥さんを、妻に愛想を尽かされたらしい利己的だった父親は優しく純真な娘を必死に守り抜こうとする。野球部の友だちを失う高校生なんて悲しい過ぎる。スリリング過ぎる釜山行きまでに人々の、不安、恐怖、混乱、悲しみ、悔恨、愛など心のドラマもしっかりと描かれているのに、まるで無駄が無い!

去年、話題になってから、どうして原題の「釜山行」じゃないんだ!?という公開が決まった頃に邦題への苦情があったのを理解出来たわ。酷い邦題ではないと思うけど、確かにこれは、釜山(という希望)へ向かう物語なんだわ。
きぬきぬ

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