くりふ

スルターンのくりふのレビュー・感想・評価

スルターン(2016年製作の映画)
4.5
【身体的にはミスキャストだが…燃える!泣ける!】

IFFJ2017の上映にて。かつて頂点を極めた落ちぶれ中年レスラーの、再起を巡る物語。

今更、サルマーン・カーン50代のムキムキボディを見たいとも思わず、相手役アヌシュカー・シャルマーもレスラー役らしいがどうせ、英雄サルマーンの弟子筋な添え物だろう、と思っていたら…いいや二人の立場は逆!と知り、俄然興味が湧いたので行ってきました。

いやー、笑った燃えた泣いた! いい映画じゃないですか! 定番展開ながら、ボリウッド直球娯楽作としては今年一番かも。…今年も大して、数見ていないけれど。

まず悪かったところ。サルマーン演じるスルターンが何故落ちぶれたのか?と回想に入ってゆく導入ですが、その過去では30歳前という設定。

…いやいや無理過ぎでしょ! どうみても膨れたオッサンだよ。こういう時こそCGメイクでフォローすべき。前半はこれが最大の欠点。

一方、アールファー役アヌシュカーは、レスラーらしい身体作りは全くしていないらしく、コッチも説得力が薄くて…。これら身体的違和感に慣れるまでが大変でした(笑)。

あと、スポーツアクションとしての流れからだと、歌と踊りがちょっと邪魔な箇所あり。ボリウッド本道だから仕方ないのかもだけど。

が、それらに目を瞑ればほぼ、文句なし!

一番感心し共感したのは、アールファーの人生を、女性差別と闘う物語として描いているところ。彼女は何故、わざわざレスラーとなり、頂点を目指すのか?

表向きはスルターンの成功と挫折、再起の物語ですが、負けぬ強さでアールファーのフェミな物語が最後まで脈打ち、本作を掛け算で面白くしています。

インドの家庭では、未だ女の子を望まぬ風潮が強く、胎児が女とわかると堕ろしてしまう、というケースもあるそうですね。そういう社会背景をすんなり取り込む手裁き、やっぱりインドの娯楽映画は巧いと思う。本作、ラストでもちゃんとメッセージを送っています。

インドの古式レスリング(相撲に近いらしい)から、現代らしくイベント化された異種格闘技への変遷も興味深いし、何よりレスリングを、敵との勝負というより、自分自身との闘いと位置付けたのが心地よかった。

燃えます泣けます、この終盤戦! エンドロール後には、客席からは拍手も起こっていました。

サルマーンは、こういう形で弱さを演じるのは珍しいようですね。現代編になってからは、枯れマッチョなジョージ・クルーニーに見えたりもしましたが、さすがの存在感でした。

漢らしきアヌシュカーはそうそうこれぞ彼女!と文句なしの嵌り役でしたが、花嫁姿や幻想シーンでの姫姿もあって、ちゃんと美しくもありましたね。

<2017.10.14記>
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