ねぎおSTOPWAR

映画 夜空はいつでも最高密度の青色だのねぎおSTOPWARのレビュー・感想・評価

4.5
《勝手に石井裕也祭り》

「もう10月だというのに、東京は気温が下がらない」とは劇中のセリフ。実際は10月になりスッと下がり始めた2023年です。

2016年のこの映画、劇場に観に行くスケジュールを探っているうちに終了してしまい、それからなんかね、押し寄せる新作の波や韓国の波、観なくちゃいけない映画の波に追いやられてしまっておりました。
あーやっぱりスクリーンで観ておきたかったなー!!

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なんつっても石橋静河!!
わたしらオッサンの世代からすると父ちゃん母ちゃんの方がよく知った人というかね。まず「娘かーーー」と「お母さんに似てるねー」な感想しか持ち得ないわけですわ。
彼女のことは、今作を見逃した翌年「きみの鳥はうたえる」で認知していいわーってなったわけです。今作で女優賞取って一気にグッと言ったわけですね。
こういうの遺伝なんですかね・・なんかもう立っているだけ、そこにいるだけで華。既に覇王色の覇気をまとってる。


池松くんも当然日本を代表する素晴らしい役者なんですけど、さらに松田龍平もいるんですからね、そことの対峙は勇気いると想像しますが、渡り合ってるもんね!






原作もある話ですから、夜空が最高密度の青色という発想、思想は石井監督のものではないのかもしれませんが、実はわたしもそんなこと思っていたので嬉しくて。
唐突ですが、わたしルドンという画家の画が大好きなんです。
彼の描く色が透明で、これぞ空の蒼だと、そう見えるんです。
夜空って光が少ないので暗く見えますが、真っ黒に塗られているわけではなく、極めて純粋で美しい透明のようなものだと思うんです。日中の青空も嫌いではないんですけどね。でも日中は結局のところ白い雲がうっすらかかっていたりする。”白”ってね、雪のように汚いものを覆いつくすだけで透明の真逆なんですよね。だから白というものはよく純粋と近しい意味で使われたりするかもですが、いえいえ、むしろ汚く塗りたくられているのではないか・・・・
・・もう何言ってるか自分でもよくわかりません。
つまりはこっそりとわたし、夜空やルドンの画を観て「これこそが透明で、青って本当はこれなんだよな」とか思っていたので嬉しくなったということです。




このね、人間生活と死との距離や些細な希望や、人間ってそもそもは汚いものを内包し、行為し、考えていて、そんなに綺麗になんて生きられないものなわけで・・って、石井監督作品だなあって思います。
原作詩集は読んでいないのですが、脚本化はかなり創作部分が多いのだと思います。

あっ、あとね、昔の対談で観ましたが、石井監督って恋愛に対してそれはとても独特で面白い考え方されていますよ。映画の表面からサラッとすくって理解すべきじゃないです。深く広く思考して、そしての生と死だったり愛について、その刹那も幸せも未来も表現していると思いますよ。


素晴らしい映画を観させていただきました。


あー、やっぱりスクリーンで観たかった・・。