滝和也

十三人の刺客の滝和也のレビュー・感想・評価

十三人の刺客(1963年製作の映画)
4.4
獲物は五十三騎!
迎え討つは十三人!

東映時代劇の中から
産まれし集団抗争劇の
傑作にして異端児!

「十三人の刺客」

当時俊英、工藤栄一の代表作。主演片岡千恵蔵、里見浩太朗、嵐勘十郎、西村晃他。あまり邦画は見ない私ですが、時代劇は大好き(^^) その中でもお気に入りの一本。三池崇史によりリメイクされた事も記憶に新しい。邦画時代劇が誇る傑作です。

旗本目付け、島田新三郎(片岡千恵蔵)は筆頭老中土井大炊頭利位より密命を受ける。暴君にして将軍家弟君、明石藩主松平左兵衛督斉韶を暗殺せよと。次期老中となる斉韶の所業は陰惨を極め、天下国家のためとならぬ故である。だが島田を知る明石藩鬼頭半兵衛(内田良平)はそれを阻止すべく立ちふさがる…。

侍としての挟持、意地がぶつかり合う見事な展開。序盤からその緊迫感は素晴らしく、荘厳な雰囲気すら漂う。撮影の素晴らしさがそれを創り出しているのは間違いない。光と影のコントラストが素晴らしく、そのアングルも興味深い。監督が作り出す様式美が太平の世を生きる武士を映し出します。

比較的心情を描き出すことを抑え、事の顛末をくっきりと描き出すノンフィクションの様な語り口であり、返って娯楽性を高めている。中盤においては二人の頭脳戦に比重がかかり、緊張感を維持し更に面白さが高まっていきます。

ただ何と言っても終盤35分間にも及ぶ殺陣シーンの凄さは群を抜いています。七人の侍にも匹敵する迫力(後年嵐勘十郎は語る)と長回しによる泥臭い殺陣は正に傑作。池田宿を全て買い取り待ち伏せする十三人。町を迷宮化し誘い込み勝負に出る。細い路地に大人数を誘い、数的不利を打破せんとする戦いはアイデアが素晴らしい。太平の時代であり、実は人を斬ったことのある武士はいない。その泥臭い殺陣はリアリティを増し、白刃の恐怖を観衆に与える。当時の東映時代劇は殺陣は美しさが要求されたはずであり、異端ぶりが更に際立ちますね。

主演の片岡千恵蔵は時代劇の大スターであり、余裕ある雰囲気と侍としての分を弁えた悟りをもつ頭目を見事に演じきっています。またもう一方の大スターである嵐勘十郎は副将格であり、その二人の存在感は素晴らしいの一語に尽きます。また若手として里見浩太朗が起用されていますが、若者らしい冷めた中にも熱い心を持つ新六郎を好演。殺陣も演技も旨さが光ります。腕利きの浪人役、西村晃のニヒルさがまた素晴らしく、ラストがまた見事にハマっています。

「武士とは主君に仕えるもの」
武士としての本道、侍としての生き様、挟持が分断に盛り込まれ、賛美だけでなく哀れ、儚さを描き、無常観すら漂う傑作でもあり、娯楽時代劇としても傑作。ぜひご覧ください(^^)

追記 この作品が、好きなので傑作と言われる三池崇史版は敢えて見ておりませんが、そろそろチャレンジしようかなとは思ってます(^^)
滝和也

滝和也