SANKOU

ドリームのSANKOUのネタバレレビュー・内容・結末

ドリーム(2016年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

何事も前例を作り出すのはとても難しい。そこには忍耐と勇気と努力が必要とされる。
これはNASAという時代の最先端を行く組織で未来を切り拓いた三人の黒人女性の物語。
1961年のバージニア州ハンプトンでは黒人差別が露骨に行われており、女性の社会的地位も低かった。 
冒頭のキャサリン、ドロシー、メアリーの三人の乗る車がエンストする場面が象徴的だった。
通りがかった警官は、相手が黒人の女性であることに侮蔑的な態度を取る。
しかし彼女らがNASAの職員であることを知った途端に態度が変わる。
警官の乗るパトカーが彼女らの車を先導する形になるのだが、見ようによっては彼女らがパトカーを煽っているようにも見える。 
実際、彼女らは黒人であるという理由だけで臨時の計算係の立場に留まっているが、能力は他の白人の職員よりもずば抜けている。
キャサリンは8歳で教師から飛び級を勧められるほどの天才的な数学者で、解析幾何学が出来ることから宇宙特別研究本部の計算係に抜擢される。
航空技術者を目指すメアリーも能力を認められ技術部に配属が決まる。
管理職の仕事をこなしながらも臨時職員としてしか扱われないドロシーも、実は天才的なプログラミングの能力を持っていたことが分かる。
三人とも能力は誰よりもあるのに時代が彼女らを認めない。
驚いたのは時代の最先端を行くNASAのトイレが白人専用と非白人用に分かれていることだった。
キャサリンは用を足すたびに職場から遠く離れた黒人専用のトイレまで行かなければならない。
そして技術者を目指すメアリーの前にも大きな壁が立ちはだかる。
技術者になるためには白人専用の学校の卒業資格が必要なのだ。
これは完全に黒人に対する白人の嫌がらせだ。
マーキュリー計画の責任者であるアルは、仕事に厳しいながらも人種や性別を問わずに優秀な人材は認めようとするが、なかなかキャサリンは彼の目に止まるまでの仕事をさせてもらえない。
忍耐の時間が続くが、キャサリンは恐れることなく自分の道を突き進む。
しかし信念や勇気だけでは時代を切り拓くことは出来ない。
彼女には確かな能力があり、結果を出したからこそ認められたのだ。
結果がすべてであるというのはとても厳しい現実ではあるが、前例を作るというのはそれほどに困難なものであるのだ。
メアリーもバージニア州の判事を説得し、白人専用の学校への進学を勝ち取る。
そしてドロシーもコンピューターが普及すれば計算係が不要になることを見越し、独学でプログラミングを学び組織に必要な存在となっていく。
最初は冷遇されていた彼女らが、困難を乗り越えて未来を切り拓いていく姿がとても逞しく、彼女らの生き方にとても励まされる作品だ。
また宇宙開発の過程がとても興味深く描かれており、最後まで目が離せない作品だった。
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