えりーぜ

ドリームのえりーぜのレビュー・感想・評価

ドリーム(2016年製作の映画)
4.0
優秀な才能は人種や性別ではなく、その才能が何千、何万分の一の確率で存在するかという分母数の多さによる。才能を見出だす可能性を増やすために、その対象範囲は人種も性別も超えて広い方がいい。
史実として黒人女性が差別を乗り越え成功する姿を描いているけど、黒人が優れているとか女性が優れているという話ではない。ただ優れた才能を持った人物が黒人女性だったというシンプルな事実があるだけだ。それでも、受けられる教育にも制限がある中で、彼女達の努力がいかほどのものだったか、想像に難くない。
差別がシステマティックに、当たり前に存在する社会では、差別する側もされる側もそれに慣れ、鈍感になってしまう。
キャサリン達は暴力に訴えるわけでなく、不満に声を荒げるわけでなく、極めて合理的に実力を認めさせる。エンタメ映画としては差別への反発や、頭の堅いエリート陣をひどくやり込めるシーンがあっても良かったと思うけど、そうでなく静かに慎ましやかに闘う姿が、現実の社会的な差別の力を感じさせる。彼女達自身も、無謀な夢を見るべきではないと立場をわきまえ、半ば諦めているのだ。
誰もが声を挙げられるわけではない。不満を訴えないからといって、不満がないわけではない。それに気づき引き出し、変えていくことができるか?
よくよく考えさせられる映画だった。