チーズマン

たたら侍のチーズマンのレビュー・感想・評価

たたら侍(2017年製作の映画)
3.0
監督と企画の相性って大事だな〜と思いました。

なんとか公開終了間際に間に合って観ることができました。
観るつもりではいたけれどまさかこんな形で早くに公開を打ち切られることになるとは思ってもみなかったので焦りました。

監督は錦織良成、監督自身の出身地でもある島根県を舞台にした映画をいくつも撮っている監督で、もう地元も地元で出身が同じ町の監督なのでやはりそこは無条件に応援したい思いはあります…。
映像がきれい。実際に広い土地に造ったセットや美術、そして目の前に広がる山々の神秘的な景色は素晴らしいです。
そして役者の演技も、特にEXILE関係の役者の演技は皆良かったと思います。MAOKI改め小林直己の佇まいの格好良さは他の時代劇でも見てみたいぐらい、凛としてました。

お話の方は、そうですね、主人公がこんな村で跡を継ぐより織田軍でビッグなるなんて村を出てった割にはびっくりするぐらいあっさり挫折して村へ帰ってくるのに拍子抜けした人もいるだろうけど、
これは実際に田舎じゃ結構あることで都会に出て行く人は多いけど割とたわいもない事ですぐ挫折して帰ってくる人も結構いて、大抵が威勢よく出てっただけにすごいカッコ悪いことこの上ないんだけどそんな事は一切言わずにこの映画の村人のように皆が優しく迎えるんですよ、何事も無かったようにそこに居場所があるんですよ、それが故郷なんだよという感じがまあこの監督らしくて良かったです。
その辺りの、中盤くらいまでは地味ではあるんですが結構良かったです。主人公のダメさも。

ただ、本来監督が伝えたかったというようなテーマと、でも映画としてはせっかくのチャンスに黒澤明っぽい活劇的な時代劇が見せたいという相反するところのズレが後半にいくにつれどんどん大きくなって結果とにかく盛り上がりに欠けまくる作品になってましたね。

そして物語には今の時代性も組み込まれてましたがそれを描くには錦織監督はちょっとトゲが無さすぎるように思います、もちろん作品によっては逆にそれが良い時もあるんですが。
基本、子供からお年寄りまで楽しく観れることを前提に映画を作る監督です。
なので、お金をかけ作り込んだ美術でルックとしては本格的な映像なのに刀で斬られても血だけは決して出ない、この一つとっても監督の資質とこの映画の相性がちょっとあれだったのかなと思いました。
無理してエンタメにしようとしなければもっと良い作品になってたと思います。
伝統とものづくり、脈々と継承していくのもまた強さ。
たたら吹きってあんな手間のかかるものだったのか。

橋爪遼が劇中で役柄上の父親から「お前はいったい何やってんだ!」ってえらい怒られてたのにはもう笑うしかないですよね…。
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