さまよう魂

ライフ・ゴーズ・オン 彼女たちの選択のさまよう魂のレビュー・感想・評価

4.5
「わたしは靴の販売員になるかも、と恐れていた」とクリステンスチュワートのような美しい女が、さも私つらいんですみたいな顔してこんな台詞を放つイキり映画が世の中にはたくさんあるけど「その美しい恵まれた肢体に特殊メイクでいいから醜い脂肪贅肉でもつけてから出直してこいよ」と思ってしまう。こちとら産まれながらの田舎者で自己卑下コンプレックスまみれでぬくぬく育った女なので、クリステンスチュワートみたいな女(弱者を無意識に見下しながら悲劇のヒロインぶる美人)(偏見)を心から憎んでいる。

リリーグラッドストーン演じる純朴なジェイミーはその言葉(靴の販売員〜)を言われた瞬間、少しひきつったような笑みで戸惑う。画面のこちら側の私としては「この女は恵まれた美人のくせに、よりによってジェイミーを前にして何を言ってる?自覚の無い嫌味か?」と醜い思考回路で即イラついたが、ジェイミー自身は純朴ゆえ、瞬時には噛み砕けない。日を跨いで改めて冷静に「(靴を売るのが怖かった?)」「何を恐れてたのかなって」と透きとおった瞳で不思議そうに聞き返すこのジェイミーの表情が、凄い。はにかんだような柔らかい笑顔にも見えるし、不安げにも見えるし、どこか憐れんでいるようにも見える…。彼女は明らかに野暮ったい田舎者の女だけれど自分を卑下していない。単調な生活に充足し、比べる相手など居なかったから。かわいい愚かなジェイミー。偶然にクリステンスチュワートみたいな女()と出会ってしまったことで、少しずつ揺らいでいく様、最後の最後、結局衝動的に会いに行ってしまって、ドン引かれるまでの一連の痛々しい流れ…初恋の少女のピュアな片想いのようでもあり、屈折したこじらせ童貞中年がストーカー化したような狂気じみた愛情にもとれる様が本当に痛々しくて…

まだほんの子どものような中身のまま身体だけが大人になり、雪に覆われた寂しい土地で健気に暮らしているジェイミー含め、私たち田舎者はクリステンスチュワートみたいな女(細く美しくモダンで都会的それでいて知的)に対して憧れも憎しみも抱きながら執着してしまう。ひどく愚かで少し見栄っ張り、人にも動物にもやさしい純真さを持っていても誰からも愛されない。自分そのもののようなジェイミーの痛々しい姿を見せられるのは本当に心臓がえぐれるほどつらい。容赦の無いケリーライカート…好き

散々言われてるけど、ほぼ主演ともいえるリリーグラッドストーンをポスターからばっさり切り取った日本版の配給はなんというか…ファッキンくそ野郎でいらっしゃる。レンタル落ちで手に入れたDVDのパケには恥ずかしげもなく堂々と「アメリカ北西部モンタナ、重なる3つの人生…」などとコピーが書いてある。自分はローラダーンもミシェルウィリアムズも好きですし、それを目当てにもしたけれど、これは許せないし、悲しい。
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