にょいりん

ANTIPORNO アンチポルノのにょいりんのレビュー・感想・評価

ANTIPORNO アンチポルノ(2016年製作の映画)
5.0
まずは、この映画はポルノ映画への反抗をポルノ映画で実践しようとした面倒くさい映画って事です。冒頭から始まるデビットリンチ風の味付けがされた悪夢のようにカラフルな部屋のシーンで、主役の京子を演じる冨手麻妙の体は素晴らしくイヤラシいのに画面には猥褻さが無い。つまりグッと来ないんです。奴隷のように扱われる秘書の典子を演じる筒井真理子に首輪を付けて引っ張ったりするSM百合場面であっても何か空回っているな〜と思ったり。しかし、これは映画内映画の話でカットの声が掛かると京子と典子は新人女優とベテラン女優という真逆の立場に入れ替わる。それもまた京子の妄想のようだったりして、京子の過去や現在の境界も映画が進むにつれて次第に曖昧になってゆく中、例の京子が典子を首輪で引っ張るシーンがセリフはそのままで冨手麻妙と筒井真理子の配役を逆転させて再現される。このシーンはいかにもポルノ映画らしく猥褻で、その対比がポルノ映画にならない為のこの映画の反抗心の一つなのでしょう。

また「女」を束縛する何かに必死に反抗するこの映画は、園監督の旧作である「リアル鬼ごっこ」の続編とも言えるかもしれません。アンチ「リアル鬼ごっこ」映画であったあの映画では物理的にも状況的にも「男」の願望に囚われていた女の子達の反抗と解放を描かれており、今作では解放されて得た「女」として生きる「自由」に囚われている女の子の「自由」への絶望的な抵抗を描かれています。「リアル鬼ごっこ」でシュールという役で出演していた冨手麻妙が今作では主演を演じ、同じロケーションのシーンがあったりするので二つの映画のリンクをより感じます。

虚実が入り交じって結局真実って何だかわからないっていうのは、この映画も現実の世界も同じで、この世界の全てにアンチを唱えてもそれで自由になれる訳でもなく、どこにも向かえなくて出口が見つからない。それでもアンチであり続けるんだっーーーというあまりにも青臭い宣言をを高らかに表明するこの映画からはその純度によって何らかのウズきを感じてしまうでしょう。その感覚は「とにかく最高!」であったり、「悪夢の様にツマラナイ!金返せ!」であったりするかもしれませんが。