ゆず

アリス&ピーター・パン はじまりの物語のゆずのレビュー・感想・評価

3.0
兄デヴィッド、弟ピーター、妹アリスの三兄妹は、ロンドン郊外の小さな屋敷で父母に愛されながら暮らしていた。想像力豊かな彼らは、動物たちとお茶会をしたり、海賊と戦ったりして毎日楽しく過ごしていた。しかし、そんなある日、兄デヴィッドが不慮の事故で命を落としてしまう。悲しみにくれる母ローズは酒に溺れ、父ジャックには過去にギャンブルで作った借金があった。残された幼い兄妹ピーターとアリスは、なんとか両親を励まそうとするのだが…。

アンジェリーナ・ジョリー、デヴィッド・オイェロウォが三兄妹の両親を演じる。兄を喪った一家の絶望と希望を描いたヒューマン・ドラマで、「不思議の国のアリス」や「ピーター・パン」にちなんだ描写が随所に散りばめられる。キャストの多くがアフリカ系というのも特徴。マイケル・ケインも出ている。

邦題が詐欺である。公式サイトでは「不思議の国のアリスとピーター・パンがもし兄妹だったら―?!衝撃と感動に満ちた大人のためのダークファンタジー」という惹句がある。さらにアンジェリーナ・ジョリーをはじめ豪華キャストが揃えば、どうしたって新たなファンタジー・アドベンチャー大作を期待してしまうでしょ。「はじまりの物語」ってことはシリーズ化あるのかと思ってしまうでしょ。

でも全然ファンタジー・アドベンチャーではない。ダーク・ファンタジーでもないと思う。ファンタジーではないのよ、これ、そもそも。続編も多分ない。
唯一「大人のための」というところだけは合っていて、つまりこれは「子供向けではない」という意味で正しい。ワクワクするやつではない。しんみりするやつ。

不思議の国のアリスやピーター・パン関係の描写は、幼い兄妹の空想の一部として登場するというわけで、彼らは本物のアリスでもピーター・パンでもないし、そのアリスやピーター・パンの物語にヒントを得てつらい現実を乗り越える的な話でもない。
正直、空想描写に何か意味があるようには思えなかった。何か意味があるようには思えないのだが、ラストでは空想に全振りしてますますよく分からない状況になってる。良い感じで終わらせていたが、これってまさか"意味が分かると恐い話"ってやつじゃあるめえな?
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