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変魚路のLemmyのレビュー・感想・評価

変魚路(2016年製作の映画)
5.0
導きとすべきは、おそらくカンギュレム『正常と病理』だ。カンギュレムに言わせれば、正常とは規範から逸脱してもなお生きていけること、つまり無理をする可能性があることである。逆に病理とは規範から逸脱できない、決まったことしかできない、選択肢が無い状態のことだ。

生と死のあわいをそれでも生きることの可能性。腐って溶け、イラブー(海蛇)と一緒に漬け込まれたフィルムを上映する可能性。老男性が連鎖劇を断片化する可能性。自分の記憶と過去の写真イメージが他人のものになる可能性。こうした可能ななかでなお映画であるといえる形式を保持している。

沖縄の現代史、沖縄の政治とは、①支配という関係としてみても、規範(国際法)からの逸脱が根源的に日米沖の関係の根幹であり、また同時にだからこそ②民衆の抵抗という点でも非暴力直接行動により統治に対抗してきた。そうした規範的・法権利的なものではない可能性としての②の(カンギュレム的)正常性が沖縄のどこを切っても溢れ出す「島プシュー」なわけだ。
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