みかんぼうや

アシュラのみかんぼうやのレビュー・感想・評価

アシュラ(2016年製作の映画)
4.3
【汚職!暴力!汚職!暴力!韓国版仁義なき戦いからの韓国版タランティーノショー】

またまたU-NEXT11月配信終了マラソンの一作。
残り20分まではあまりにも面白すぎて、★4.7~8くらいのつもりでしたが、結末がさすがに“やりすぎ感”を感じ・・・それでも同じ韓国映画でいうと、「オールド・ボーイ」以来の衝撃度と暴力性でかなり衝撃的だが面白い作品でした。

とにかく出てくる人間たちの悪人面!一まともなヤツが一人もいないんじゃないか、と思うくらい悪人面のオンパレード!そして何か解決しようと思えばまず暴力、拷問!血につぐ血・・・日本のヤクザ映画を遥かに超える極悪非道な・・・いや、待てよ。よく考えたら、こやつら市長に警官に検察官・・・ほぼ全員“公務員”ですわ(笑)。どんな国よ、韓国!と思わず突っ込まずにはいられない内容ですが、もちろんフィクションなのでそこはご愛嬌。とはいえ、全てが空想のファンタジーではないので、作品に登場する汚職、隠蔽工作、警察・検察の事件を解決するための暴力など、全くゼロベースではなく、何か元ネタになるような歴史的背景や慣習的なものもあるのでしょう。

裏切り裏切られ、都合が悪くなると口止め代わりに殺し殺され、という展開は、ヤクザ抗争ではないものの日本の「仁義なき戦い」を彷彿とさせる展開。この仁義なき戦いが検察と市長の間で展開されるのだからとんでもないことです。しかし、どのように話が展開していくのかが全く読めず、また誰が敵で誰が味方か、誰を信じて誰を怪しむべきか、も判断ができないくらい登場人物の全員にクセがあり怪しさ満点なので、ただただ先の展開を知りたくて物凄く引き込まれます。

しかも、物語の展開が面白いだけではなく、途中のカーアクションシーンをはじめ、一つひとつのアクションシーンもド迫力で見応えバッチリなので、一度引き込まれてから最後までガッチリ掴まれ続ける。

結末はね・・・ネタバレになってしまうので詳しくは書きませんけれど、要するにクエンティン・タランティーノなのですよ。ただ、この終わり方は、それまでの展開やスケール感が素晴らしかっただけに、個人的にはあんまりだったかなぁ。タランティーノ作品の場合は、彼の作品特有の“敢えて”のB級感や作りの豪快さがあるので、いい意味でお笑い的なノリで、「最高!」と叫びながら見られるのですが、本作はそれまでの巧妙で緊張感のある展開からのあの締めなので、そこは個人的に引っかかってしまいました。が、これは好みの問題で、個人的にこの終わり方だから好き、という方も多いはず。

クセありまくりの悪人面の猛者たちありきの映画ですが、その迫力があまりにも凄すぎて、韓国の俳優陣の演技力にただただ脱帽です(とくに市長!)。私は邦画も好きで、邦画と韓国映画は良さが違うので比べること自体ナンセンスでしょうが、このタイプの迫力ある演技は、邦画ではなかなか見られない、というかもはや“韓国のお家芸”ですよね。韓国映画の恐ろしさをまざまざと見せつけられました。
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